第5話 宝の在処

小学生の時は自然を駈け巡ったりもした。野山に行ったり、川辺に行ったり・・・今考えれば大ケガしててもおかしくないようなことばかりしてたのかもしれない。両親に心配をかけて申し訳なく思うが、生きていることで勘弁してほしいとも思う。

そんな私であったが、特に学校の裏山が好きであった。足を踏み入れようとするとそこには木が生い茂り、来るものを拒むようであった。構わず進めば、突然開けた場所に出る。

そこには広場らしきものと崖がある。ただ崖といってもさほど急ではなく、小学生が駆けあがることの出来るくらいなものであり、故に小学校の授業でも使われるくらいだった。

授業だけに飽き足らず、私と友人達はその山を冒険してみようと午前授業の後に山へ行く約束をした。

授業で行っていたこともあり、それほど苦労することもなくいつもの広場まで辿り着いた。しかし、ここからが本番である。崖を登り、その先へ行くのだ。周りには誰も行ったことがいる人がおらず、未知への領域へ足を踏み入れることになった。

ただ流石小学生、一切怖じ気づくことなく進んでいった。道に迷うとか、ケガするとかどうでもいい。なんとかなるだろう。その「先」を見たいがために進んで行ったのだ。

そして辺りが開ける。何だろうかと見れば、そこには街の景色が一面に広がっていた。学区はおろか、川、国道、遠くの市街まで見える。自然の展望台だ。

私達はしばし言葉を失い、心から湧き上がる達成感に酔いしれたのだった。偶然宝を見つけた小学生達の頭を、五月の風は撫でていった。

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