第4話 只の空想か、或いは

ある風景に心を動かされたとき、こんな人たちがこんなことを想ってたのだろうな、と空想してしまうことがある。

大学のゼミでむつ市に行ったことがある。街中にむつ松木屋という百貨店があり、そこを見学した。四階まであり、元々はすべてのフロアを営業させていたが、現在は営業しているのは二階までだ。三階、四階では催し物が開かれたり、レストランもあったと聞く。

そんなむつ松木屋の近くに旧田名部駅がある。大畑線の駅で、2001年に大畑線が廃線となると同時に、駅も廃止となり現在はJRバスの待合室として使われている。

私が田名部駅を訪れて驚いたのは、しっかりとホームの形があり今にも電車が来そうに感じたことである。確かに線路こそ見えないが、周りも綺麗に整備されているせいか電車が来て人が乗り降りしそうな雰囲気さえあった。

この駅から降り立ったらどんな風景が見えるだろうか?興味本位でホームを背にし、降り立った時の風景を見てみた。すると、少し遠くにむつ松木屋の看板が見える。それと同時に、私はある親子の出来事を想った。

ある日曜日。電車に揺られてお出かけ。目的地はそう、むつ松木屋。色々買い物をしたあと、レストランで少し食事をしようか?坊やはよい子だからご褒美にオモチャを買ってあげよう。ホームに着いてドアが開いたら坊やが早く行きたいと私の服を引っ張る。慌てなくても逃げないよ、と諭す私。うん、と頷く坊やの笑顔は太陽のように輝いていた・・・

・・・親子を想ったとあるが実際この親子は居たかどうか分からない。所詮その場の雰囲気を感じ、勝手にした私の空想である。しかしながら、長い時の中、そういう親子は本当に居たのかもしれない。とすればこれは只の空想か、或いは・・・

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