第3話 輪は廻り続けて

小学校の頃は学区なんてのがあり、そこから出てはいけないなんて決まりがあった。悪いとは思ってても、当時の私はどうしても小さな区域に収まろうとは思えなかった。

何で出かけるかといえば、もちろん自転車。それに乗ってこっそりと学区外へ出て、街の刺激を楽しみ、自然に癒やされ、そして先生に叱られるのであった・・・・。

めでたく学区が関係ない中学に進むことができた私はさらにエスカレートする。休日は自宅を出て、10キロ離れた隣町まで行っていた。目的なんてない。ただ走りたかっただけ。私の若き衝動をエネルギーとして自転車は動いていた。

こんな調子でタイヤを何回パンクさせたのだろう?パンクの状態を見て、父親・母親には走りすぎと呆れられた。ただ穴が空くのではなく、すり減りすぎて糸が見えていたからだ。そのためタイヤ交換になり迷惑もかけてしまった。

大学生となり、弘前に移り住んだ私は初めてのゴールデンウィークに青森に行った。自転車で。ただ平坦な七号線を往き、浪岡で休んで、大釈迦を超えて、そして見える青森市街・・・何物にも代え難い達成感がアスパムにはあった。

現在、自動車免許があるため自転車に乗る機会は減った。しかしどこか遠くへ、遠くへと行きたい気持ちは変わらない。今度はどこに行こうか、なんてことを考えつつ仕事をこなしている。そして休みの時、輪は廻り続けて何処かへと向かう。私の衝動をエネルギーとして。

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