秘められた過去
イド:(…………確か、この近くやったか。ヘルム・アークのおかあが住んどるっちゅーのは…)
(イドは記録を頼りに、町外れの民家を訪れた。)
……頼もう!誰ぞ居らんがか?
メディーナ:どちら様、ですか?
(姿を表した女性は、酷くやつれた表情でイドを出迎えた)
イド:わしの名は………イド。近衛養成所を抜けた剣士よ。おまんに…伝えにゃならん事があって参った。
………ヘルム・アークについてじゃ…
(言いにくいのぅ。自らおまんの息子を殺めたと………どないな反応が返って来るか、嫌でも想像できるけな)
メディーナ:……………息子は、ヘルムは無事なんですか!?私の元から拐われて、もう2年…………
幾ら捜しても、手掛かりすら掴むことはできず…便りもない。挙げ句に弟たち、エルとヌルも……3ヶ月前に……ううっ……!
(堪えきれず、メディーナは崩れ落ちてしまった。そんな様子を見ると、自分の罪を告白するという決意が揺らぐ。これ以上、酷な話を聞かせる事になるのだ。)
イド:兄やんは………脱走幇助の罪で、3ヶ月前に……処刑された。
メディーナ:ああ……!どうしてヘルムが………?処刑だなんて……優しくて真面目なあの子が………どんな悪いことをしたと言うのですか……!?
イド:兄やんはな、実の弟たちを逃がす手伝いをした罪に問われた。
……ちなみにの、逃げた二人は今も見付かってはおらん。おそらく何処ぞで生きとるじゃろうが……
おそらくおまんの元に戻る事はないじゃろうな。連中も、兄やん等を見付けるためかつての住処である此処を見張っちょるやろうけな。
メディーナ:ああ、二度と息子に会えないなんて………!生きているのなら、せめて一目で良いから…逢いたい………
(メディーナがそう言って背後を振り向いた瞬間、一発の銃弾が彼女の胸を貫いた)
イド:………!しっかりせい、今死んでもうたら……二度と逢えへんで!
(そうは言ったものの、メディーナが助かる見込みが無いことは嫌でも分かった。的確に撃ち抜かれた場所は、急所だったのだ)
メディーナ:………剣士様、お願いが…あるのです。どうか……………息子を、ヘルムを処刑した……
その方を………倒して…………
(最後まで言い終わらないうちに、メディーナは死亡した。気付いたらイドの頬には、涙がつたっていた)
イド:……………その願い、しかと聞き届けようぞ。必ずや………仇を討とう。
(イドは亡くなったメディーナを葬ると、銃を撃った追っ手を斬り捨てた。
彼はそのまま養成所にとんぼ返りすると奇襲を仕掛け、子供を除く全ての関係者を抹殺した。
そして、ほとぼりが冷めた数年後、一度は決別すると決めた近衛部隊へと志願した。)
(………わしゃ、全ての元凶となった養成所を壊滅に導いた。じゃが…それだけでは足らん。あんな末端の組織一つ潰そうが……何れ悲劇は繰り返す。
わしができる償いは………
へごもんをたたっ斬り、組織の幹部にのしあがる。んで……中から近衛という大きな組織をわしの力で解体する。全て済んでから………自ら命を絶とうぞ。それまでは…例え死んでも死にきれぬ。
わしの真名、ウェパールに賭けて。)
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