イドと日向(全てを忘れるということ)

"相手の事を一つずつ忘れる薬が10本ある部屋に閉じ込められた二人。全て飲み干すまで出られないとしたら……?


*一人で全て飲み干すと相手の事を完全に忘れる条件付き"


日向:…………どうしろと?


イド:飲まな出られへんねやろ?わしが飲んじゃるけ。


(十本すべてを強奪する)


日向:ちょ、ちょっと待ちなさい!記憶が失われるって説明、読みましたか!?


イド:それがどないした?わしゃ前に言うたど、記憶が無い(失う)事を悲しいと思ったことは無い……っての。


今更おまんを忘れたところで……


日向:この………わからず屋が!


(イドの頬を思い切りビンタした)


貴方が良くても……私は…!貴方に忘れられることが堪らなく恐ろしくて、悲しくて………


貴方という世界の中から……私という存在が抹消されるということは、貴方の中で私は死んだと同義。


相棒に、そんな想いをさせるのですか!?私を…置いていかないでください………もう二度と………っ…………耐えられないん…です…………


イド:日向………よお聞け。わしがおまんを忘れたところで、記憶は新たに作ればええ。


(そっと日向を抱き抱えた)


それにな……おまんもうっすら分かっとるじゃろ?わしに忘れられる事と同じくらい……わしの事を忘れることが辛いと。


日向:…………!そ、それは………


イド:ならばわしが、その悲しみは全て引き受けようぞ。幸いなことに、わしにその悲しみは通じへんからの。


もう一度、再会の時を………


(日向を抱き抱えたまま、全ての薬を飲み干した。その直後、日向に関わる全ての記憶がイドの中から抹消された)


(それに…おまんは忘れてはいかん。あろうどわしに固執する事になった…………全ての始まりを…)


(薬を飲み干したイドはそのまま意識を失った。日向が慌てて身体を支えるが、手から空の薬瓶が落ちて割れた)


日向:…………どうして………私にも背負わせてくれないのです……!


どうして………一人で全てを、背負い込むんです……!


貴方が私を助けてくれたこと、完全に忘れちゃったじゃないですか…。


(日向は一筋の涙を流した)


私と貴方を繋いでくれる……最初で最後の、手掛かりだったと言うのに。私、自信がありませんよ……再び絆を紡ぐなんて………

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