支流3

(酣は人形に姿を変えると主に駆け寄った)


酣:主様!音無!…………申し訳ありません。私がついていながら…こんな事に……。


イド:………えい。そげに己を責めんな。悪いんはわしじゃ……


(いつの間にか背後にエルが居た。酣に剣の切っ先を突き付けている)


エル:貴様……何処から現れた?何者だ?


(酣は振り返ると一礼した)


酣:私は主にお仕えする従者、遊宴の酣でございます。


エル:じ…従者………だと?なら貴様は…こいつを護るために………


酣:勘違いしないで戴けますか。今の主には戦意はありません。

私は純粋に主の命に従うのみ。主が望まぬ以上は敵であろうと手出しいたしません。


日向:………エル、剣を引きなさい。戦意があるのならばとっくに斬りかかって来ているでしょう。武器も持っているのですから…


エル:……くっ…………師匠が、そう仰るなら。


(エルは納得がいかない表情だが剣を仕舞う。酣は周りを気にも留めず主であるイドの身体に寄り添う…)


酣:(私達は………何時、何処で…道を違えたと言うのですか…?教えてください、音無………!)


日向:酣さん、でしたか。彼を…私達に託していただけませんか?


酣:………主様を、ですか。


エル:拒否権は無いぞ。罪人を拿捕するのは当然………


酣:そう……ですね。主様の事、お任せ致します。如何様にでもしてくださいませ。例え死罪に処されようと…私達に異議はありません。


日向:………いえ、処刑するつもりはありません。せめて、傷の手当てをさせてくれませんか?


エル:し、師匠…………。どうして彼奴をそんなに気に掛けるのです?


日向:………後で教えてあげますよ。


(酣は主を託して剣の姿に戻った。

その間にイドは傷の手当てを受けたが意識不明に陥っている)


(運命の悪戯なのか……こんな形で再会することになろうとは。20年…長いようで、短いですね………


そういえば…イドは、何故倒れたんですかね。ほんの一瞬……姿が見えた彼と何か関係が……?)

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