支流2

日向:一つ、この手合わせには私の部下を立会人として同席させます。二つ、この手合わせで私を消すのは結構ですが…その後。立会人以下、全ての部下への手出しを禁じます。


エル:……師匠!?一体何を言って…奴が聞き入れるわけ無いでしょう!


イド:………かまん。受けようぞ。元よりわしゃ……日向っちゅー輩を斬る目的以外、手合わせする気もあらへん。


日向:ありがとうございます。ならば…いざ尋常に、勝負です!


(刀を引き抜くと斬りかかる)


エル:(そもそも、止めを刺す前に止めろって……奴が聞き入れるわけ無いだろう。逆でもそうだ、俺が止めなくても自分の意思で止めれば良い。一体何を考えて?)


(気がつくと人斬りの剣が撥ね飛ばされていた)


………!これなら、勝てる……?


イド:………っ。(動きが…速い。酣は見切られてもうたか……!例え音無でも、弐速でかからな敗ける…)


日向:降参、ですか?構いませんよ、それでも……


(イドはもう一度、水差しの酒を呑むと音無に手を掛けた。だが引き抜く様子ではない)


イド:(落ち着け……わしゃ、間違っとらん。"日向陸道はへごもん"…確かにそう聞いたじゃろうが)


日向:………来ないなら、私の技で引導を渡すまで。……震雷。


(イドは咄嗟に音無を引き抜くとガードしたが、間に合わず一撃を喰らってしまった)


イド:やっ…………やりよるが……。


(荒い呼吸になりながら首筋を抑えるとしゃがみこんだ)


エル:(まさか、師匠の震雷を受けて気絶しないなんて……!防御は失敗したのに、理由が分からない。)


イド:………我が一太刀、影もなく。音すら立てず……ただ夢<幻>の如し。


日向:………!?(この状況で何を……"詠唱"していると…?そもそも呼吸すら不安定な状態だと言うのに。)


イド:………解き放て、無影・音無。かりそめの力をわしに貸せ、悪を斬る一刀……背面刀技。


日向:くっ……!太刀筋が…み、見えない……っ…?


(致命傷とはいかなかったが、日向の動きを封じるには充分過ぎた。腹部を刺されてしまう。)


イド:………なっ……!音無……………?


(突然イドは何者かに斬られ倒れた。その表情は驚きと深い後悔に満ちていた)


エル:……日向様!そ、そこまでだ…両者手合わせを止めろ!


(その声をイドが認識したのかどうかは分からない。だがもう戦意は無いようだった。)


イド:………すまなんだ……音………無…酣………。(そのまま音無を手放すと動かなくなった)


日向:………不覚を…取りましたね。あんなに速い太刀筋……なんて。

(でも、その太刀筋に私は救われた。あの時も数人をほぼ一瞬で……)


エル:……大丈夫ですか!?しっかりしてください……


日向:ありがとう…エル。少し深手を負いましたけど大丈夫ですよ。

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