源流13

イド:(現にヌルは……失った記憶が戻りかけて錯乱してもうた。エルも…)


日向:確かに、一般的に辛い記憶を失うのは心を護るためだと言われています。そういう意味ではヌルにはかなり耐え難い内容だったでしょうね。


イド:のぅ、"大切な人を失う痛み"ってのは………そげに辛いもんなんか。養成所でもさいさい言われたが……"人の最大の弱みは自分自身に非ず。回りの人間の存在こそ利用せよ…人質と書き<ひとばしら>と読め"とな。


……わしにゃ記憶がない。じゃが記憶が消えたことを辛いと思ったこともないんや。

あいたぁ等の考えに染まるのは癪に障るがな……わしのような生業の奴にゃ家族も友も……"足手まとい"になる。


人柱に囚われへごもんに屈しては人斬りの名が廃る。かと言うて見殺しにしてもうたら何しよんやわからへん。

"毒を以て毒を征す…"わしは独りでええがや。何者にも靡かず屈せず…"誰とも群れず"。


日向:"大切な人を失う痛み"、私にも覚えがあります。確かに人は……他者を引き合いに出されると手も足も出なくなる。

……ですが、護るべき人が居ると、その人を護るため強くなろうとする。……………私は、そう思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る