源流11

イド:……うっ………?(あれは……全て夢?過去の来歴が………)


(跳ね起きた時、自分の髪の色が白銀に変化していることに気付いたようだ。苦しい表情で髪を手に取る)


あん時と……同じやと………?

……"過去の柵"はそう簡単に………


ヌル:ね、おじさん……だいじょぶ?


イド:(まさか……兄やんに会ったからか?今更過去を掘り返して何ぞとする………徒に兄やんの傷を開く事がわしへの償いと言うか?)


(イドは流れ落ちる冷や汗を拭おうともしない…回りの声すら耳には届いていないようだ…)


……数奇なる運命<さだめ>に縛られし我が魂よ…自死すら赦されぬと言うならば何をもって償いとする?恨まれ蔑まれる事は慣れても……未だ拭えぬこの思い…

俺は何故………生きて。やはりあの時に………明かしてしまえば良かったか……?

さすればいっそ仇として逝けたろうて…


日向:イド!しっかりしてください!何があったのですか……


イド:……!?なっ………何じゃ、おまんら、いつの間に側に居ったんじゃ……


ヌル:おじさん、汗びっしょり…苦しいの?暑い?


イド:どっちでもない。旧い過去を思い出しただけや………


日向:その"過去"って……髪の色が変化したことにも、関わりがあるのでしょうか?


イド:まぁ、の……(見られて…しもうた……か。もう……………伏せれぬか。)


エル:失礼します、定時報告に…………!?き、貴様…目が覚めたのか…この……"人殺し"が!


日向:エル!何て事を言うのですか!?まだそうと決まった訳では……


イド:えい。言わしてやったれ。少なくともこの兄やんにゃ…その権利がある。


日向:イド?それはどういう意味で…


イド:のぅ、エル・アークよ。久しいの。


エル:貴様ごときに名を呼ばれる事になるとは……この死に損ないが。


ヌル:エル……おじさんの事、知ってるの?


イド:(ほうか…ならこの童は……弟のヌル・アークか……記憶が無いんじゃの。幸か不幸か……)良く知っとる。無論、おまんの名もな。


日向:一体何があったのですか。さっぱり話が見えませんけど。


イド:おまんが決めい。エルよ。過去を振り返る覚悟はあるか……?


エル:良いだろう、全て吐け。お前の罪にまみれた過去を………洗いざらい……(日向様の目を覚まさせるにも…)


イド:ヌルっちゅーたな、おまんもええか?失われた過去を知ること…


ヌル:あのね、聞かせて?


イド:わーった。ほなら…全て吐いちゃる。わしは……いや、俺は昔近衛が秘密裏に運営しよった養成所におってん。


日向:近衛が、養成所を?そんな事実は初めて聞きました。


イド:うむ。既に養成所は無くなってしまった上、関係者も殆ど居ないからの、知りようが無いんじゃ。

……んで、何の養成所か……と言うとな、暗殺部隊や特殊工作部隊を担う人材を育成する所やってん。


日向:じゃあ貴方はそこで、暗殺の手腕を叩き込まれたと?


イド:せや。近接戦闘ならその当時、右に出るもんは居らんかった。


日向:"近接戦闘"……?何故、近接戦闘限定なのですか。


イド:養成所は、わりと細かく分かれとったんや。近接戦闘…遠距離…後は特殊戦闘やったか。そのうち俺が居ったんが近接戦闘。


所属7233区画58隊375番。ほれ、みてみぃ…


(着物をめくると太腿の焼き印を示す)


養成所に入ったときに刻まれた…柵よ。


ヌル:ね、おじさん?それ……痛そう。どうしてそんなの…


日向:確かに。これではまるで…囚人のような。


イド:囚人…なぁ。その通りよの。養成所に入った輩は………皆、親元から拐われたんや。わしかてそうやったらしいけ。


日向:"らしい"………?何故ご自分の事なのに、他人事なのです?


イド:覚えておらん。養成所に入る前の記憶が無いんじゃ、何もかも…


ヌル:おじさんも?あのね、僕もなの。諜報に来る前のこと、覚えてないの…


エル:ヌル……。(ヘルム兄さんが逝ったと聞かされた時に、記憶を失ってしまった。辛うじて俺の事は覚えていたが…)

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