源流6

イド:おまん、ここの者か?


門兵:はい、それが何か……!?ひ、日向様じゃないですか!おい!エル様に御伝えしろ!


イド:確かに、届けたど。ほなな。


(そのまま省みることもなく立ち去った)


エル:日向様!しっかりしてください…!一体誰が送り届けてくれたんですか?


門兵:それが、名も名乗らず直ぐ去ってしまいまして。


エル:困ったな、せめて御礼をしたかったんだが…。特徴を教えてくれないか。ヌルに捜させる。


(イドは日向を送り届けた後、街道の外れにある空き家に居た。不意の極みも切れ、とうとう歩けなくなってしまったらしい。)


イド:(目眩が酷いか……今襲われてもうたら……終いじゃの。)


(壁にもたれ掛かり…苦しそうに肩で息をしていたがそのまま倒れてしまう。幸か不幸か…人気はないようだ)


ヌル:えーと……赤い髪…長くて……?水差し持ってて……(水差しってなんだろ…)あ、ほっぺに傷と……黒い着物……


(人相書きとにらめっこしていたヌルだが、たまたま通りかかった空き家でイドを見つけた)


………!あのね、だいじょぶ?……起きない……。どうしよ、この人で合ってるのかな?(でも、そっくり…)


………わっ…血が…………たくさん…

……エルに、診てもらお。


(意を決して彼を担ぐと、ヌルはそのまま連れ戻した)


ヌル:あのね、エル?合ってるかわかんないけど……見つけたよ?酷い血だらけなの。


エル:ご苦労さん。合ってるかは後で確認する。(確かに酷い傷だな……この短時間で誰かと殺りあったのか?あまりに不審な点が多い。事情聴取序に探りをいれるか…


日向様の傷は……銃創だった。銃なんかまだこの国では珍しい、かなり絞られるか…。それに彼奴は何者で、どうやって日向様に出会い此処まで連れてきたのか……謎しかない。)


調査兵:エル様。報告します、日向様に撃たれた銃は………


エル:うむ、ご苦労だった。また何かあれば報告頼む。


調査兵:はい、失礼します。


エル:(読み通り、近衛部隊に支給された外国の銃だった。つまり…彼奴は近衛部隊の人間と一戦交えていても不思議ではない…だが妙だ。彼奴の傷は……刀傷。


銃相手に無傷で立ち回るのは不可能に近い。現に日向様が撃たれているからな……まさか…彼奴は………近衛部隊の人間か?)……おい調査兵!近衛部隊の面子を調べろ!


(数十分後。険しい顔をした調査兵が報告に来た)


調査兵:エル様、報告します…。彼の素性が割れました。近衛暗殺部隊の序列一位、人斬りのイドです。


エル:うむ。やはりそうだったか…助かった。任務に戻ってくれ。まだこの事は内密にな。(近衛暗殺部隊の、序列一位…実質幹部クラスだ。日向様はこの事をご存知なのだろうか。とにかく……)

ヌル、彼奴の治療が終わったら地下牢に連れてってくれ。


ヌル:あのね、わるものさん?


エル:かもしれん。日向様が目覚めれば事情を伺えるが念のため、な。


ヌル:うん、わかった。ね、お側に居た方がいい?


エル:うーん……そうしてくれると助かる。起きたら教えてくれないか。(意識不明の重体とはいえ目を離す訳にはいかんな……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る