イドと日向(二人の出会い)

イド:げほっ………!(また……か。武技のせいか………?)


日向:………イド?その血は………


イド:……!な、なんやあらへん。(しもうた……見られてもうた…)


日向:それ、いつからです?正直に話しなさい!


イド:そ、そげに怒んなや。ほんの半年程じゃ……


日向:………は………半年、ですって?何故隠してたんですか!?


イド:別に聞かれなんだからのぅ。それに…わしが倒れようと、誰や悲しまんけぇ…どうでも良か。


日向:………!すみません、先に非礼は詫びておきます。


(勢いをつけ日向はイドを殴り飛ばす)


イド:……!?(な………殴られた…?わし、なんか変な事言うたんじゃろうか…それに…)

おまん…………泣いとんか……?


日向:どうして、そんな自分を卑下するんです!誰も悲しまないなんて……どうして分かるんですか!


イド:事実じゃろうが。わしが人斬りである以上………恨まれる事はあれど…


日向:この、分からず屋が!


(もう一度日向はイドを殴り飛ばす。当の本人は訳がわからないという顔だ)


日向:失望しました。まさか私を救ってくれた恩人が、ここまで重症の患者だったとは。


イド:???おまん…………何を言っとんね………


日向:本当はずっと伏せておくつもりでしたが…


………私は20年前、とある理由で迫害を受けました。その時、私はもう少しで殺されそうになったんですよ。通りすがりの剣士に救われなければ……今の私は存在しなかったでしょう。


イド:(20年前…というと、わしが人斬りになった次の年じゃったか…懐かしいのぅ)


日向:その剣士は、こう言ってました。【大の大人が寄って集って……恥ずかしゅうないんか!才能がある幼児に嫉妬して、みっともない………これ以上この幼児に手ぇ出すなら、わしが相手になっちゃる。


わしは悪を斬る人斬りじゃ。おまんらのような法で裁けん醜い咎人に…死の鉄槌を下しちょる。覚悟せぇ!】………と。


(日向の話をつまみに、イドは酒をのみ始めた。難しい話をするときは専らそうなのだ)


イド:ほぅ。剣士………か。(ずいぶん訛った喋りじゃな、そいたぁは)


日向:別れ際に彼に言われました。【おまんは生きろ。亡くした家族のぶんも。そして見返しちゃれ…僻んできた阿呆等では行けん高みに登るんじゃ。業はわしが背負っちゃるけ…安心せぇ。】


……私、彼に名前を聞いたんですけど…教えてくれませんでした。それでも……それでもまた会いたい。そう思って私は………政府直属の諜報部に入りました。


それでも彼を見つけるのに………十数年掛かってしまったんです。


イド:よぉそれで見っけたもんじゃの。名も知らん輩を見っけるのは骨折れんで?


日向:ええ、そうですね。最初の数年は手掛かりが一切無かったので諦めそうになりました。

結局彼の手掛かりを掴んだのは今年だったんです。


イド:ほ……今年、じゃと?そらまたえろぉ最近じゃの。


日向:(それ、素で言ってるんですかね。まさか未だに自分の事と認識していないんでしょうか…?それとも、そもそも覚えていないとか………。)


酣:(ああ……この反応は、全く合点がいっていないのですね。嘆かわしい……)


音無:(えっえっ……?お、俺も分からないんだけど……あ、そもそも出会う前だから当たり前、なのか……。なんか、切ないな…)

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