支流&転生版日向(短編台詞)
……どうして…どうして伏せてたんですか!私は、そんなに頼りないですか?私は貴方の側に居たくて、今の立場についたというのに…
私は………何故忘れてしまったんでしょうか。何故今になって思い出したんでしょうか………
……私が記憶を取り戻した時には、既に手遅れでした。イドは意識が戻らず、そのまま私の腕の中で亡くなりました。せめてもう少し、私の記憶が戻るのが早ければ………
私は、貴方の獲物にはなり得ません。悪を裁く、人斬りのイド。貴方は…道を違えている。
この小瓶の薬は、精製が不十分だったのでこの量を服用しても効かなかったんですよね…今の製法なら過剰摂取なのですけど。
……彼は未だにこの薬が何か、存じないのかも知れませんね。痛み止めだったんですけど。
……しかし。まさかこの小瓶を後生大事に持ってくださっていたとは。思いがけず確信を持つことになりましたね…(義理堅いと言いますか、物持ちがいいと言いますか…)
目の前で失われゆく命を……なすすべなく見ている事しか出来ないなど、私は何のために医者になったんでしょうか…?
私は…貴方の側に居たくて。貴方を救いたくて………それなのに…
今の私は、あまりに無力で……貴方の哀しみも孤独も苦しみも………何一つ、存じ上げなかった。
どうして…忘れてしまったんでしょう。どうして…もっと早く………せめて止めを刺す前に…思い出してあげられなかったんですか……!
…お願い……します…目を………覚まして、ください………!私を……独りにしないで…
ううっ………ごめん…なさい……私が側についていながら………この手で…死なせてしまうなんて………
イドが亡くなってから、私は諜報を抜けました。目的を失い、逃げるように…人里離れた集落跡地に住み着きました。希死感に苛まれながら…それでも踏ん切りがつかないまま、今に至ります。
いつかイドは言いました。
"おまんが逝っても、誰や喜ばん、むしろ…逃げおって、そう言われるだけや。辛くとも苦しくともおまんは生きろ。恨まれ狙われる覚悟を持て…それが人斬りじゃけん。どげに己が憎うても、自ら死を選ぶな。恨まれ蔑まれて、己が罪の重さを背負え。"……と。
今私が死を選べば確かにこの苦しみは終わるでしょう。ですが………それは、全ての罪を背負い戦ってきたイドを…冒涜しているような、そんな気がするのです……。
だから私は…今もこうして生きています。せめて彼の事を、己が過ちを忘れないように…
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