試作
【ソイレントシステム内】
先生:救難要請が出てたんですが…珍しいですね、あなたから呼び出しがあるとは。
(呼び出し主のイドは気絶している……。缶詰の中に見慣れないものがあるようだ)
先生:ん……?これって…
(表記にはE_GD.3と出ている。試作段階の強エーテルガードのようだ)
…………ええと。はからずも…実験は成功のようですね。ただし…強すぎるので実用化は厳しいでしょうが。
効果が抜けたら検査ですねえ…(あのイドを気絶させる程の抑制力……ある意味恐ろしいですね)
イド:……………?(俺は……何を………?
身体は………動かねぇ…か…)
先生:…災難でしたね、イド。うっかり試作品を食べてしまうとは…
イド:試作…?そういや変なのが
混じってたような………?
先生:普通の缶詰より数倍強いエーテル抑制成分が入ってたんですよ。おそらくそれ一個で発作が収まるほどの…ね。
イド:うへ…道理で………途中で急に意識ぶっ飛びそうになるし身体は動かねぇしギリギリだったな……
先生:食べたとき他に何かありました?副作用的な意味合いで。
イド:んー…?食ったすぐぶっ飛びかけた以外は…………
いや、ダメだ。そもそもエーテルが効かないから体調の把握も厳しい。
何も感じなねぇ。
先生:そうですか。薬が抜けるまでしばらく検査に付き合ってもらいますよ…?
運悪く動物実験前に治験しちゃったようなのでね…
イド:ああ……断る道義はねぇぜ。……起きてられねぇが存分にやってくれ……
(イドは弱々しくそう言うと力尽きたようだ)
先生:……これ、治験以前に強すぎて廃棄した試作品だったんですか…
(研究資料に目を通すと先生の表情が険しくなってゆく)
ふむ……え?この数値…致死量…
副作用………頭痛…意識障害……呼吸不全………?
え、生きてますよね?
(脈をとる)
逆に…イドだからこそ…無事だった…?
(3日経つがほとんど目覚めないようだ。先生はその経過をメモしている)
3日経過も効力は薄れない模様…副作用の1つとして感覚麻痺。
これ…リエルに戻ったら大変なのでは…?
(更に3日が経過)
イド:うっ…頭いてえ……
だが…逆にやっとこさエーテルが効くようになったのか……?
先生:………お久しぶりですね。1週間近く意識不明で…手放しで無事、とは言いがたいようですけど。
イド:へ………?そんなに寝てたのか…。よいしょ…うわっ!
(身体が言うことを聞かず寝床から落ちた)
先生:あらら…まだ動かない方が良さそうですね……(ここまで酷い有り様とは、さすが廃棄品ですね)
イド:いてて…確かに。どんな仕組みか知らねえが頭がダメだ…気抜いたら目眩が……
(先生に寄りかかって動けなくなる)
先生:…頭痛と目眩…ですか。
(確かに…致死量越えですから、おかしくないですね…)
(イドの身体から力が抜けた。主導権が移ってしまったらしい…)
リエル:…………?目が回る……(くらくらする……)
先生:あっ…リエル…?大丈夫ですか?
(イドより具合が悪そうに見えないのはエーテルに頼る必要が無いから、ということでしょうか…)
リエル:だいじょぶ…頭はくらくらする…けどそれ以外はあんまり…?
(立ち上がると自力で寝床に戻る)
先生:(………良かった…のでしょうか?)
まだ本調子じゃないなら寝てた方が良いですよ?
リエル:(そんなにだるい訳じゃない…
けどもうちょっと…)うん…少し寝るね……
先生:目眩は共通の症状ですねぇ…
感覚麻痺はエーテル抑制の結果…で副作用とは少し違うようで。
もうしばらく様子見ですね。
(リエルの表情が険しくなっていく。魘されているようだ)
リエル:(…嫌だ…僕は………
……………たく……ない…!)
(飛び起きる)
……はぁ…はぁ…今のは………何…?
先生:どうしたんですか?魘されていたようですが…
リエル:嫌な…夢………?あんまり覚えてないけど…(内容忘れちゃった…)
でも頭くらくらするのは治まったよ!
先生:そうですか…良かったです。
(イド?余裕があれば体調チェックして報告願います。)
イド:(承知した…。確かに、リエルの感覚なら異常は無さそうだ)
先生:(まだ薬が完全に抜けたとは思えません…おそらくイドが主導権を持てば不調が出て当然だと思います。ただ…どこまで緩和されたか、を確かめる必要はあると思います。)
(イドが主導権を握るとそのまま踞ってしまう)
イド:はぁ…はぁ……(立ってられねえ…)
目眩は無くなった。だが…ものすごい疲れる…?この感覚はまさか…
(シミュレーションルームに入ると指弾を放つ。)
………まずい。薬が強すぎて抜けた後…俺自身のコントロールが効いてない…?
先生:頭痛、エーテル抑制に伴う感覚麻痺に目眩…と。1週間程意識不明で…
分かってるのはこれくらいですね。
E_GD.3…単純に6倍ですもんね。
(試作品の過程をメモしている)
イド:……はぁ…はぁ…せ、先生…エーテルの……制御が…出来なくなった……
薬が強すぎて…身体がそっちに順応しちまったのか…立ってるだけでものすごい疲れる…
先生:エーテルの制御が…"出来なくなった"?つまり今…一挙手一到足に常に全力を出してるようなものですか?
イド:まさしくその通り…だろうな。試しに打ってきたが…指弾の威力も跳ね上がってた…
先生:……それは困りますね。エーテルガード付けますか?対処法が確立できまでの暫定処置ですが。
イド:……ああ、不本意だが頼む。
守護者は天使か悪魔か 限前零 @rieru_sai
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