無闘の決意、誇りの重み2

<医務室>


リエル:………イドさん………?どこ?


日向:リエル?目が覚めたのですか……


リエル:イドさん………呼んで!あのまま戦ったら、死んじゃう!


(リエルが叫んだ直後、重体となったイドが担ぎ込まれた)


日向:どうして………!あのイドが……(それに、この傷は………)


兵士3:お願いです日向様!今すぐギアドックへ……このままでは突破されてしまいます!


日向:………分かりました。リエル、イドの側に居なさい。治療はスタッフに任せれば……助かるはずです!


リエル:………うん。お側に居る。


(日向は微笑むとリエルの頭を撫で、そのまま兵士と共に走り去った)


………お願い、そーへーさん…イドさんを……助けて。


"我が神よ………深き慈愛を……

………傷つきし………癒したまえ………"


(僧兵の呪文を詠唱し、イドの傷を癒そうとする。半信半疑ではあるが、かつて発動したあの時を信じて……)


イド:…………………?(身体が……重い…。それに俺、確かギアドックに居たのに…)


(イドが身体を起こすと、同じベッドでリエルが突っ伏していた。添い寝でないのは明らかだが……)


………おい、リエル?一体どうなったんだ……


スタッフ:イド様!?まだ動いては危険です……


イド:…………え。まさかこの部屋…医務室なのか…?何で俺は、此処に居るんだ?教えてほしい。


スタッフ:その……ギアの攻撃を受けて、吹き飛ばされてしまったんです。重傷だったので、救護班が直ちに搬送したんです。今、現場の指揮は日向様が執られています。


イド:そうだったのか…道理で、身体が重いと思ったわけだ。手間を掛けて悪かった、俺はそろそろ行く。


……リエルを頼む。


スタッフ:イド様………!無茶ですよ……


(イドは慌てるスタッフを後目に、重い身体を引き摺るように医務室を後にした。砕かれた骨が、動きを阻害する。目に見える外傷は粗方治ったものの、深い傷はまだ完治していないのだ)


くっ………!早く行かないと…先生が危ない………さすがに分が悪い。


(道中襲い掛かってくる敵を、エーテルの槍でなぎ倒し、ようやくギアドックにたどり着いた)


イド:…………先生!戻ったぜ、退いてろ!


日向:イド……!?貴方、どうして此処に戻って…!


イド:……話は後だ、来るぞ!

纏めて散れ、我が槍の前に伏せ……


"解放されし粛清の力"!


(放たれた槍は、敵の駆動系統のみを的確に破損した。動けなくなったのを見計らい、日向率いる味方のギア部隊が敵を殲滅した。慌ててギアから降りた日向はイドに駆け寄る)


日向:大丈夫なんですか!?そもそも動けないほど酷い怪我だったはず……!


イド:あ、ああ………目が覚めた時には、粗方癒えていた。まだ骨が砕けたまんまだが………


日向:……!この、馬鹿!そんな状態で無茶をして……死んでしまったら、誰がリエルに付き添うのですか?


私では、貴方の代わりになれないんですよ。リエルの為にも…こんな時くらいは無茶しないでください!


イド:…………そう、だったな。ごめん、先生…………


(緊張が解けたのか、日向にもたれ掛かって動けなくなったイド。抱き抱えた時、右腕と左足が使い物にならなかった事に気付く)


日向:(まさか…自ら手を下すスタイルのイドが、私達を頼ったのは……"利き腕と利き脚を壊されていた"から?跳躍と殴打ができなかった?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る