反逆

先生:………(よく寝てますね?起きてるときは計れないので…


(先生はイドの手首に手を添えているようだ…)


寝てるのに速い…明日ちょっと面談しましょうか…。


イド:…………ん?どうしたんだ先生。起き抜けに手を握られてるとビビるんだが…


先生:…え。まさかずっと起きてたんですか?


イド:いや、寝てたけど目が覚めただけだ。昔みたいに…気配を感じたら、覚醒した。

(これは…この感覚は…殺気だな。)


先生:…それって…まずいのでは。また、昔みたいに眠れなくなったのですか?


イド:いや…違うな。やはりそうか……


(何かに気付いたイドは立ち上がると外に行く)


先生:…え、ちょっと…何処に……?


(先生が様子を伺うと、戸の外には兵士の姿があった)


イド:(この殺気は…俺に向けたものか?)お前か。何用だ?


先生:…(彼は…エリィの部下の……フランツ?こんな時間に…)


フランツ:へっ…お前か。新しく幹部になった野郎ってのは。


イド:……ああ。それが何だ?


フランツ:明日の夜九時、バトリング闘技場に来てもらおうか。逃げるなよ。


(宣戦布告をすると彼は立ち去る。イドは呆れた表情のまま部屋に戻ってきた)


イド:…なあ、先生。あいつ…いつの話してるんだ?俺が守護に就いたの、ずいぶん前だぞ。


先生:………いえ、彼は知らなくて当然かもしれません。地上担当の戦闘部隊です。しばらく此方に戻ってませんでしたし…


イド:……はぁ。(そもそも幹部と分かってて呼び出すって…アホなのか?)まあいいか。とりあえず寝るかな…

ねむてー……


(医務室に戻るとすぐに寝てしまった。)


先生:……今度こそ眠れたようで。問題は…なさそうですけど。(呼ばれてはいませんが、こっそりついていきましょうかね。彼が何をけしかけて来るか分かりませんし。)


(イドは約束の時刻丁度にたどり着いた)


イド:さてはて…何が出るかな?(喧嘩にしちゃ…物々しい場所に呼びやがって。)


?:へへ…本当に来やがった。チョロいな。


?:ああ…フクロにされるとも知らずにな…


?:いっちょ、先輩としてとっちめてやりますか。


?:ひひっ…腕がなる。


(どうも相手は四人いるようだ)


イド:(一匹は昨日の野郎か…後三匹は……?)

守護天使を呼び出したわりには礼儀も糞もねーな…名前くらい名乗ったらどうだ?(ま、無駄だろうが。)


?:おい…15歳の若造が何か言ってるぞ?


?:へへっ…威勢が良いな。


(イドを嘲笑っている、名を名乗る気はさらさら無いようだ)


イド:………(一応ゲブラーの隊員だから加減してやらねーと。)はぁ……こいつらの上司の面を拝みてーな。


(身体を鳴らしながらそう呟いた)


?:先輩として礼儀を教えてやる!


(あろうことか四人纏めてかかってきた…が、イドは動じることもなく我流の拳法で叩きのめす。)


?:がっ……不覚…!


(四名のうち二名はそのまま気絶するも、残り二名は何とか立っている。)


エリィ:ちょっと!貴方たち何やってるの!?イドさんに喧嘩売ってるって聞いたけど!!


?:あ……誰だよチクったの……?


?:ほっとけ。バレなきゃいいんだよ。


イド:………(まさか、奴らの上司って…エリィかよ。こんなチンパンジー相手か…損な役だな)


エリィ:そもそも何でイドさんに?貴方たちイドさんの事知らないの!?


?:へっ、知らねーよ。


?:確かにな。若造ってこと以外。


エリィ:……あのね。イドさんはね…大型ギア相手に生身で闘って勝つような人よ。守護天使になるのもそれなりに理由があるの!


イド:(ばっ…言わなくていーだろ別に……余計面倒を引き込むってのに…)


?:へへ…傑作だな。


?:ホント。隊長?下手くそな嘘はいけませんねぇ。


(あり得ない偉業を聞いて笑っている)


?:ならこいつもあっさり殺れるんだろうな?それくらいしてから言えっての。


(何か大きなものが奥から出てきた)


イド:………はぁ。

やっぱり、場所柄出るとは思ったが。


(出てきた"それ"を目に呆れている)


エリィ:!?ち…地竜ランカー…貴方たち、殺す気!?


?:だってギア相手に生身で殺りあうんでしょう?


?:どうしてもってんならあの若造が土下座でもすりゃ考えてやるよ。


イド:…別に構わん。黙って見てろ、エリィ。こんな雑魚一匹…俺にとっちゃ朝飯前だ。


(勢いをつけて飛び上がると、ランカーの頭部を1発蹴る。うめき声をあげてランカーは倒れた)


………これで、満足か?


(振り返ったイドは彼らを睨み据える)


?:え……?あのランカーが……一撃…?


?:ひぃいっ!こいつ、ば…化物じゃねーか…!


(あり得ない光景を目の当たりにして腰が抜けている。)


先生:……そこまでです。これ以上はやりすぎですよ?


?:げっ………し…守護天使様……?


?:ま…まずいぞ…どっから聞かれて…?


(二人は顔を見合せ青ざめている)


イド:なるほど…エリィを呼んだのは先生か。納得だな。(助かった…正直これ以上はキツかったからな……)


先生:…始めから、全て見てましたよ?何なら戦闘記録用モニターも残ってます。言い逃れはさせませんよ。


?:うそ…だろ…………?


?:わざわざ止まってる時間を選んだのに……


(さっきまでの威勢は何処へいったのか、みっともなく狼狽している)


先生:手動で起動することくらい可能ですよ。とにかく…守護天使への反逆で軍法会議になるでしょう。

イド、エリィ。貴方たちも出席するように。良いですね?


エリィ:ええ、分かりました。


?:畜生…!


(一人がイドの横顔を睨んでいる)


イド:…承知。


先生:…日程は追って知らせます。今日は解散しましょう。


エリィ:では…失礼します。


(他の連中は蜘蛛の子を散らすように逃げていった)


イド:…何故、止めたんだ?


先生:…そりゃもう…反逆の証拠は残りましたし。何より…自分がよく分かってるのではありませんか?


イド:ははっ…把握済かよ。……はぁ。


(一息吐くと座り込んで動けなくなった)


先生:…さて…私達も戻りますか。


(イドを抱え上げようとするが、制止されてしまう)


イド:…う。ちょ、ちょっと待ってくれ。あれ、殺らないと……まずいよな?(仕留め損ねてたか…)


(ランカーは気絶しているだけだったようだ。目を覚ましてこちらを睨んでいる)


先生:…えっ………!?さ、さすがにあれは倒さないと…(しかし、イドの体力は持つんでしょうか……)


イド:先生居るから…別にいいか、気絶しても。


(エーテルの槍でランカーを貫き、イドは今度こそ体力が尽きて気絶した)


先生:……簡単なほう、選んだんですね。(しかし…あの槍…体力の消費が酷いですね。)


(その後イドは一度も目覚めず2日寝倒した)


イド:……よく寝たな…。


先生:おはようございます。会議は明日になりました。


イド:あー…そういやそうだっけ。おう。そもそも俺、軍法会議に出て何すれば良いんだ?


先生:…事実確認を手伝って貰うだけですよ。証言は私がするので補足などあれば言ってくれれば。


イド:……ふーん。まあ、行けばわかるか……。エリィもか?


先生:ええ。エリィは…彼らの上司なので、お咎めを受ける側ですねぇ。精々厳重注意くらいかと。


イド:…部下がチンパンジーのせいでとばっちりか。


先生:普段から指示をあまり聞かない部下でしたから…気苦労は多かったでしょうね。(おそらく今回でその苦労は無くなると思いますが)


イド:俺…そんなの見てたら絶対単独で動こうと思うな。いちいち使えない野郎の事見てらんねえ。


先生:…確かに…イドは人に指示する前に自分で全て終わらせるタイプですもんね。


イド:使われるのは癪に障るが使うのも嫌だな…(組織に携わるには一番向かない人種だろうな…)


先生:…適材適所、ですよ。さあ、もう少し休みましょう?会議で寝られると困りますから。


イド:……そうだな…おやすみ、先生。


先生:……私は記録の確認と準備を…

(リアレンジ…の手続きと…)


<次の日の朝>


イド:……ふぁ…眠いな…(枯渇したせいでまだ体力満タンとはいかねえか。)

おはよう先生。ずいぶん早いんだな…


先生:…あ。もうそんな時間ですか、おはようございます。(うっかり徹夜しちゃいましたね…忙しくて。)


イド:……無事に終わると良いんだが。(何故か、タムズの時のような…やな予感がするな。一体何が起きるんだろうか。)


先生:…無事に終わらない会議なんか存在するんですかね?(下手に抵抗すれば自分の立場が悪くなるだけ、ですから考えにくいですけど…)


イド:…それもそうか。行こうぜ、先生。


先生:……ええ。


ラムサス:揃ったようだな。これより緊急軍法会議を開始する。


ミァン:議題は…火軍突入部隊兵四名による守護天使への反逆行為について。では…証言を。


先生:…では…私が。

事の起こりは3/31。夜中2時にフランツがイドの元を訪れたのが始まりです。医務室の外で短く話していました。


内容ですが…

①イドが守護天使であるかの確認

②4/1午後9時にバトリング闘技場へ来ること

でした。


イド:(別に補足は…要らねえか。完璧だ。)


先生:……続けます。

午後9時にイドがバトリング闘技場へ到着後、彼らが罵倒しながら乱闘に突入。この時点で2名はイドの反撃で気絶。

エレハイム少尉が到着したタイミングもこの時点です。


ミァン:ちなみに…罵倒とは、具体的にどんな内容ですか?


イド:それは…俺が言おう。

15歳の若造が…

先輩としてとっちめてやろう…

礼儀を教えてやる…


だろうか。この時点では。


ミァン:…よく分かりました。続けて。


先生:……その後、エレハイム少尉からイドのあらましを聞いたストラッキィ及びブロイアーは、無断で地竜ランカーを召喚。そのままイドにけしかけました。

イドが一撃でダウンを奪い事なきを得たところ迄が今回の全貌です。

戦闘記録用モニターに詳細が記録されてるので提出します。


ラムサス:これは…決定的だな。殺意を隠すそぶりも無しか…


ミァン:度重なる守護天使への罵倒…無断召喚に暴行。処遇はいかがなさいますか?エレハイム少尉への処遇もありますが。


イド:(やっぱエリィもお咎め食らうのか…連帯責任、か?)


ラムサス:では処遇を発表する。まずエレハイム少尉。管理不行き届きで厳重注意とする。


エリィ:……はい。


ラムサス:フランツ、ストラッキィ、ブロイアー、ヘルムホルツ。以上四名はリアレンジ処理。

以上だ。四名を直ちに連行するように。


イド:…はぁ。(終わった…か………)


フランツ:嫌だ!僕はアイツなんか……認めない!!嫌だーーー!


(絶叫した彼は、兵士に引き摺られて連行されていった)


先生:…ふぅ。お疲れ様でした。イド。


イド:ああ…先生も。(最後のあいつ…なんなんだ?やたら食って掛かってたような。)もういいのか?


ラムサス:会議は終了した。災難だったな、イド。まる2日意識不明だったとか。


ミァン:確かに…地竜ランカーと闘う羽目になったのは大きかったでしょうね。


ラムサス:これからも活躍を期待しているぞ、イド。では我々も失礼する。


先生:…お疲れ様です、カール。じゃあ、私達も戻りますか?


イド:そうだな…(何だ…まだ何か…起きそうな、妙な感覚……?やな予感が…"消えてない"?)


兵士:脱走だ!フランツが逃走したぞ!逃がすな…!捕まえろ…!


先生:……!?と…逃走ですって?まさか、そんな事…


フランツ:見ぃつけたぁああ!死ねぇ!


(手に持った剣を構え、イドに体当たりした)


イド:しまっ………た…!


(腹部に深々と剣が刺さっている。フランツは取り押さえられたがイドはそのまま意識を失った)


先生:…まさか…これを"狙っていた"と?会議の後とは…油断していました。

とにかく傷を塞がないと…


イド:(やな予感…こういうことか…俺としたことが…………不覚だったな…)

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