一條七瀬3

一ノ瀬:僕ね、生きてる人間の心臓の音をずっと聞くの、大好きなんだよねぇ。


キモナシ:何言ってんの?君の場合は"だんだん弱っていく音"を聞くのが好きなんでしょ。


一ノ瀬:ありゃ……バレた?


一條:(何ですか、この人……?ただならぬ怖気が………)


………帰りましょう、音無。


音無:え。もう診察終わったんですか……?


一條:私まだ死にたくないです、とにかく帰ります!


(一條は走って逃げてしまった)


音無:あ……待ってください主!勝手に帰ったら怒られますよ!?(先生に不審がられる前に捕まえないと…!)


一ノ瀬:………そういえば、次の患者さん来ないね。呼んだのに。


キモナシ:む、なんか廊下が騒がしいな、ちょっと様子見てくるよ。動けないのかもしれないし。


(キモナシが廊下に出ると、音無に組伏せられた一條の姿があった)


君たち、な……何やってるの?


音無:うう……すみません。主が土壇場で逃げ出そうとするので……


キモナシ:大人になっても居るんだよね、病院が苦手な人は。


一條:(私悪くないです、このままだと私殺されます)


音無:はぁ……主、なんで急に怖くなったんですか?さっきまで平気そうだったじゃないですか。


一條:………死にたくないので黙秘します。


キモナシ:ちゃんとお話してくれないと分からないよ?どっちみち再検査受けなきゃ死んじゃうかもね、冗談抜きで。


一條:嫌です、貴方怖いです!死神ですよ!さ、触らないでください……


音無:主、さすがにお医者さんに対して死神は失礼ですよ。


キモナシ:なるほど。さっきの"あれ"、聞こえたんだね。


音無:あ……"あれ"って何ですか?


キモナシ:ASMRって聞いたことない?ある種の音をずっと聞くと、心地よくてすぐ眠れたり……まあ色々あるんだけどさ。


そこから好きな音の話をしてたんだけど……彼は要点を飛ばして聞いちゃったから、びっくりしちゃったんだろうね。ごめんよ。


音無:あの、そんなに怖いようには思えないんですけど……?(たかが音じゃないか…)


キモナシ:ははは。さすがの君でも、弱っていく心臓の音が好きなんて聞いたらびっくりするでしょ?


音無:……!?(こ、この人……マトモな先生じゃない?)


キモナシ:寝入り端に丁度いいんだな、これが。自分の鼓動とリンクして、快眠なんだよねぇ。(………もちろん出鱈目だけどね)


音無:(この人に主を任せて大丈夫なんだろうか。俺も急に不安になってきた)


<後書き>


キモナシ:もう、なんで僕がフォローしなきゃならないんだろ。君のせいで変態扱いされちゃったじゃないの。


一ノ瀬:えへへ……助かったよ。ま、快眠の為じゃないけどね。


むしろお仕事モードまっしぐらって感じかな?


キモナシ:知ってるよ。それ絶対患者さんの前で言わないでよ?今度はフォローできないからさぁ。


一ノ瀬:りょーかい、気をつけるよ。


音無:(あの人が言ってた音、探し当ててこっそり聞いてみたら……眠れるどころか逆に魘されてしまった。


そもそも俺は生命維持活動が無いから同調もなにも無いだろう、と思ったんだけど……


夢の中で主が死んでしまう情景が見えて、飛び起きてしまったな)


一條:………音無。聞いてますか?


音無:あ…………は、はい。すみません主。(まだ、あの夢が頭に残ってる…)


一條:今日の貴方少し変です。私を取り押さえた張本人が、怖じ気づくとは何故ですか。


音無:そ、そんな事ないですよ?主の感情が伝わってくるから………別に、俺自身は怖くなんてない、です。(うう……なんで夢は、あの病院だったんだろう?"予知夢"じゃないといいんだけど……)


一條:………거짓말뿐。(嘘…ばっかり。)

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