夢と現の狭間で2

烏丸:………くっ。寝てなんか、居られねぇ…のに…!(あの夢…まだ、手に締めた………感触がある。


しかも、さっきもまた別の夢を見た……あの男、アイツにそっくり…)


(数十分後、烏丸は医師の話を無視しふらつく身体を引き摺って病室を抜け出した)


はぁ…はぁ………。せめて…警察の野郎と話す…前………に…!


(辺りを気にも留めず脱走する烏丸を、そっと追い掛ける医師。想定内といった表情だ)


医師:………んもう、寝てなさいって言ったのに。ふらふらじゃないの。(だけど、ちょっと変な感じがする。"せめて、警察と話す前に"……?


彼は一応容疑者の身分だったはず。逃げるとか証拠隠滅ならともかく……そうじゃないなら、なぜ?)


こら、烏丸君。何処に行くの?


烏丸:………!う………っ…


(驚きから腰が抜け、尻餅をついてしまった烏丸。後退りしようとする所を医師に捕まった)


医師:………怒らないから、言ってごらん。そんなに急いで行かなきゃダメな所?


烏丸:……………っ。


医師:別に意地悪で言ってるわけじゃないんだ。ただ純粋に、そんな体調で出掛けさせたくないの。


具合が良くなってから、卯月君を同伴させてからじゃ間に合わない?


烏丸:………時間、がない。人が………人が死んでるかも、知れない…んだ…


医師:何だって?死んでる"かも"ってことは…はっきりとは分からないの?


烏丸:二人…………二ヶ所……目の前で、夢が………現実に…!俺は、俺が…!


後生だ……止めないで…くれ………!これ以上、誰も………見てるだけなんて、嫌だ…。


(烏丸の目から、涙が溢れた。荒唐無稽な話だが、嘘を吐いている様子ではなかった)


医師:(二人も安否が不明なのか……。嘘ならお説教で済むけど、本当だったら見殺しにしてしまうな。


それに、今の彼の体調を鑑みれば幻覚の可能性も捨てきれない。納得させるためにも……)分かった。規定を踏み倒す事になるけど、僕が同伴しよう。その為に、二つ約束してくれるかな?


一つ、事実を確かめたらすぐ戻ること。もう一つは……僕の指示に従うこと。


烏丸:それ、守ったら………アイツには……言わないでくれる…のか?


医師:うん。少なくとも君が外で動き回った事実については卯月君や他の刑事には伏せるよ。


万が一傷病者や遺体を見付けちゃったら……それは、うん。通報するけどね。どう?それでいい?


烏丸:………頼む。


医師:よし、そうと決まれば早速行こうか。ほら…僕に掴まってよ。


(二人は烏丸の記憶を頼りに、一つ目の場所を訪れた。そこは……女性が刃物で刺殺された現場だった)


烏丸:………ち、違う…!こんな筈じゃない!ナイフじゃなかった………。


(烏丸は自らの手を固く握りしめる。手に残ったあの感触を振り払うように)


何で……何でなんだよ!?女に見覚えがある、現場も同じ…なのに。手口だけが、違う…!


医師:(確か卯月君がこの子に聞こうとしてたのは、この現場の話。無実ならまだ知らなかった筈なんだよね……)


あまり長居しない方が良さそうだね。さ、次に行こうか?


(二つ目の場所は、以外にも病院のすぐ近くにある裏路地だった。そこには……)


烏丸:………!おっ……オッサン…!


医師:卯月……君?何があったの!?動かないでね、烏丸君!


(パニックに陥った烏丸を制止し、倒れている人物の生死確認をする医師。幸いにも気絶しているだけのようだ)

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