古の記録(ケルト神話)1

1.終わりの始まり


ミレ:貴方は退魔の剣も鍛える事ができる腕利きの鍛冶屋だそうだな?


ヌァダ:………そうだ。俺に何か用か?


ミレ:……ふっ。この剣を鍛えてもらいたい。


(差し出された剣を見るとヌァダの表情が険しくなった)


ヌァダ:(………これは!?何故こやつがこの剣を………?)


良かろう、引き受けた。


ミレ:……期日は、次の満月だ。しかと託したぞ。


(謎の男、ミレが立ち去り……残されたヌァダは依頼人への疑念が拭えずにいた)


ヌァダ:………この剣は、神殿の宝物庫に納めてあったはず。何故奴が持っていたのか……事情は何れ問い質さねばなるまい。


(月日は流れ、とうとう納期が訪れた)


………確か今日だったな。悪用を防ぐために、我が力を込めておくか……


(ヌァダが剣に力を込めたその瞬間、全ての力と魂を……剣に吸われてしまった。


たまたま隣の部屋にいた娘のルーが、その一部始終を目撃してしまう。)


ルー:いやあああああ!!お父さん……どうして………!?お願い、戻ってき…………


(言葉を言い終わらないうちに、ルーの腹部に鈍い痛みが走る)


…………痛っ…………!


(ルーが事態を把握する間も与えず、意識が遠退いていった………


タイミングを見計らったように、"そいつ"が現れた)


ミレ:くくっ…愚かで哀れな親子よ。俺を恨むなら……"モリガン"を恨むが良い……


2.困惑の娘


(腹部に痛みを覚えて数分後、ルーの目が覚めた。目の前に転がる父と自分の亡骸、そして……青い光を纏った自分の姿。)


ルー:……………!?これは…私の身体?じゃあ今の私は………死んじゃったの……かな………?


(不安や絶望、あらゆる負の感情に囚われそうになった時、父であるヌァダの声が聞こえる)


ヌァダ:………落ち着くがよい、ルーよ。今のお前は、剣に魂を吸われただけだ。まだ死んではいない……今はな。


そして……今のお前の姿は、剣が変化して身体になっている。


ルー:お父さんの姿は、ないんだね…………。どうして?


ヌァダ:私は………ただ力を吸われただけに過ぎん。剣はお前を選んだ、"契約者"として……な。


ルー:契約?訳がわからないよ、お父さん………


3.父の作りし契約


(ヌァダは重い口を開き、契約の条件を話し始めた…)


一つ、剣と契約を結ぶ者…自らの命を懸けて成立する。契約放棄は自らの死と同義。


(契約放棄とは:自らの剣と結んだ契約の目的を果たそうとせず裏切る行為を指す)


一つ、自らが目的を果たすまで契約は続行される。剣を我が命、力とし……生き永らえるものである。


一つ、目的を果たせば24時間以内に宿主である剣が崩壊。契約者も同時に命を終える。


一つ、命を失った契約者は………いかなる死因であろうとも、二度とこの世に生を受けること叶わず。


ヌァダ:………以上が、私がこの剣に込めた条件。


ルー:込めた……?


ヌァダ:………この剣は…元を正せば私が作った剣。

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