黒之主と楓(過去1)
楓:甘い!アタシを仕留めようなんざ百年早ぇ、出直してきな!
(楓は暗殺者を蹴りで圧倒する)
───はっ。"力の欲望"に溺れた権力者が…"管理者"に敵うと思うんじゃないよ!
(倒された暗殺者を一瞥する)
アタシだって…望んで得た力じゃないけどさ。お前らみたいな奴にだけは渡したくないもんだ。
仮にお前らが"候補者"だったとしても………絶対に認めない!
人を道具としてしか見てないような奴が…万物を統べるような力を持ったらどうなるか、嫌でも分かっちまうよ。反吐がでるね。
別に今更死を厭わないからさ。本当はお前らに始末される事は大いに結構、なんだけど。(この力を引き継がせるという柵がなきゃね……)
(アタシがこの力を引き継いだのは…20年前の事だった。とある罪人の処刑を依頼された事から全ての運命は決まってしまった。
奇妙な話を持ち掛けられたんだ。"絶対に殺せない罪人"を始末しろと……その代わり、礼は弾むとね。確かに目も眩むような額だったけど………今考えりゃ、とんだ安請け合いをしたもんだ。
まさか、こんな重い柵に縛られる事になるなんて…さ。仕事自体は易いもんだったよ。元処刑人とはいえ、理性が吹っ飛んだせいか、ほぼ素人のようなもんだったっけ。
異変を感じたのは……始末した直後の事だった。アタシ、立ってられなくてさ…馴染みの医者の所に担ぎ込まれたんだ。
見立ての結果、アタシの身体は…"既に死んでいる"状態だと分かったんだ。よくよく調べて貰って分かったのは…"その瞬間"で身体の時間が止まってるって事実だった。
だから、攻撃を食らっても…怪我すら負わないし、毒や病気もならないんだって。つまり"不老不死"みたいなもんだって言われたよ。
なんでそんな状態でアタシが存在しているのか、結局医者には分からなかった。とりあえず死なないから良いやと思ったからね、そのまま立ち去ったんだけどさ。
帰りに雑魚に絡まれたとき、別の異変に気付く羽目になったよ。時折、あいつらの事が……"止まって見えた"んだ。
もちろん、気のせいだと思ったんだよ。担ぎ込まれた直後だったからね、調子が悪くてもおかしくないだろう?
だけどそれは……気のせいじゃなかったよ。その時に斬り込んだらさ、あいつら…酷く驚いてたよ。"動きが見えない"……ってさ。
斬り込んだ時の感触も変だった。なんかこう………斬れる感覚が無いんだ。確かに得物が当たってるのに、傷がつくのが嫌に遅い。
よく見てて分かったんだけど、止まって見えている間、傷はつかなかった。こうなったら一つの結論にたどり着くしかない。
始め方も終わり方も分からないけど、アタシは相手の時を止める力がある……って。
その事実に気付いてアタシは頭を抱えたよ。不老不死に加え、妙な力まで使えるようになったんだ。
この事実がバレたら……この力を悪用したがる輩に狙われるのは目に見えてたからね。)
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