黒之主と楓(現代)

?:"時は…我が手の内に。(時間停止発動)


───我が名は、黒之主。

時を司る神。


ヒトの子よ…貴様、我が"見える"のか?(楓の頬に触れる)


楓:………神様?貴方、が……………


黒之主:ほぅ。我の声も聞こえ、動けるというのか。実に興味深い………


楓:ねぇ、教えて。神様だって言うなら…貴方はどうして此処に居るの?


黒之主:我は…………時を乱す愚か者を裁きに来た。(遺体を一瞥し)そこらに転がっている"人形"の作者をな。


楓:………この子達は……っ!人形なんかじゃない!


黒之主:受け入れられないからといって、事実から目を背けるな…。既にこやつらの身体は、奴のせいで人形に成り果てているのだ。(動きを止められたマエストロを指し)


永遠の美………?ふざけた事を言う。時を乱し…神にでもなったつもりか。ヒトが死に絶えようが興味はないが……神の領域に足を踏み入れた罰は下す。


(黒之主は楓から視線を外すと自称マエストロを睨み据える)


愚かにも神の領域に足を踏み入れたヒトよ…その身、その魂を以て償うが良かろう。時の神黒之主の名に於いて命じる………


人形から失われし時を甦らせよ……再び魂を宿せ。


(マエストロの命が尽きた代わりに、薬で人形にされていた楓の同級生は全員無事蘇生した。)


柊:楓!何やってるの、早く逃げよう!


楓:………え、あ…うん!(黒之主が…"見えてない"の?どうして…誰も……?)


(楓が後ろを振り返るも既に黒之主の姿はなかった。柊に腕を引かれそのまま脱出した)


………もう、会えないのかな。


柊:楓?今何か言った?


楓:………ううん。何でもない。


<誘拐事件から数ヶ月後>


(楓は黒之主の事を調べている)


時の神様って…いっぱい居るんだ。へぇ…神様って、"信仰されなきゃ消えちゃう"んだ…………(まさか、消えちゃったとか、無いよね?助けてくれたお礼も言えなかったんだもん。それじゃあんまりだよ……)


黒之主:…………想定外だ。ヒトの子は忘れっぽいと聴いていた故に記憶は消さなかったが。


神とヒトの子が共に過ごす事は叶わぬ………やはり記憶は消さねばならぬか。


(黒之主は窓の外から様子を伺っていたようだ。険しい表情<かお>をしていたがそのまま立ち去った)


楓:………くろのす……?(ギリシャ語って…普通に日本人の顔じゃん。カイロス…此方も違う。何か間違ってるのかな………)


ふわ………っ。ねむーい………調べもの、また明日にしよ………


(楓はそのまま眠ってしまう。見計らっていたように黒之主が部屋を訪れた)


黒之主:………全て忘れるがよい、ヒトの子よ。我の事も…忌まわしきあの出来事も………


(楓の額に触れると呪文を唱える。)


さらばだ。……楓。


<翌朝、楓の部屋>

楓:………ううん……続き、調べよっと。えーっと…なんだっけ。


……………?あれ……思い出せないんだけど。検索履歴見たら…分かるかな?


"神様"………"くろのす"…

何、これ。学校の課題?にしてもセンス無さすぎなんだけど………でも……何かが引っ掛かる。大事なこと、忘れちゃった気がする…


黒之主:記憶は完全に消した筈だ。何故だ……何故悩んでいる?事実すらねじ曲げ、あの忌まわしき出来事は無かったことになっているのだぞ。


楓:………思い出せない。柊ちゃんに聞いたら何か分かるかな………っ。

(何でかな……思い出そうとすると、頭が痛くなる………)


どうして…?あたし…"泣いてる"の?(楓の頬を一筋の涙が伝う)


黒之主:………記憶が消えても…想いは消えない…か。昔聞いたが事実だというのか?ならばどうしろと言うのだ。今更我が正体を明かそうが…


(我の力は………争いを産む力。今更ヒトを巻き込ませたくはないんだがな………

………ふん。"巻き込ませたくはない"、か…我にもまだそのような考えがあったとはな。)

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