とある神の昔話(黒之主独白)

強すぎる力は…いとも容易くヒトを狂わせる。先代がそうだった。


先代はこの力を引き継いだ直後、見境なく殺戮を繰り返す殺人犯に成り果てた。


腕利きの処刑人だったことが災いし…意図せず引き継いでしまったのだとか。


この力は楔のようなもの。先代を殺めた瞬間、己が命を代償に引き継ぐ。不老不死といえば聞こえはいいが………逆だ。


引き継いだ瞬間に、ヒトとしての"死"が定まる。力を手放す迄の間、時が止まっているだけ……


それに……力で狂わずとも、孤独でも狂わされていく。


時が止まるとは……その"瞬間"に取り残されること。今でも我は…"40年前"で止まっているのだ。


周りは我を置き去りにして……否応なしに進んでいく。時の流れから弾かれた我は………


多くの同胞だった者を見送った。考えても見ろ、己を遺し…大切だった者が一人、また一人と………命を終えていくのだ。


今では我の同胞は誰も居ない。真の孤独……だ。どうせヒトと縁を築いても…また置いてきぼりを喰らうのだぞ。


だから我はもう、誰とも縁を築くまいとした。ただ候補者に力を託し…柵から解かれたいと思うようになったが……もうひとつ、真逆の思いも芽生えた。


我が柵を解かれるということは……別の誰かが柵に縛られるということ。ならば事実を明かした上で、覚悟なき者には託すまいとな。


今一度問おう、"候補者"よ……


お前に、"力と終わりの見えぬ孤独"に立ち向かい受け入れる"覚悟"はあるか?

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