わんこ君5

研究者A:(聞いたか?人狼実験、中止だとよ。)


研究者B:(被験者は?あんな化け物どうすんだよ…)


研究者A:(破棄処分、だとよ。野放しだから襲われるんじゃねーか?)


研究者C:(おい、被験体7233番が居ないぞ!まだ処分の手はずは済んで……!?)


研究者A&B:(うわああああ!?逃げろ、殺られるぞ………!)


?:(皆殺しだ!俺はお前らの……玩具でも人形でもねぇ!)


研究者C:(ちくしょう!破棄処分なんか緩い、殺処分にしろ!許可は出たぞ!)


?:(ちっ……銃!分が悪いか………やむを得ん、人に戻って逃げ………)


(直後、電気枷に電流が走った。激痛に苛まれながら壁にぶつけ、辛うじて装置を破壊して逃走を謀った)


?:(ぐっ………血が……。身体も言うことを聞かん。さすがにここで終わりなのか……?)


…………おいで。


?:(……誰、だ………?幻覚なのか…)


…彼等は僕が惹き付けよう、

もし追っ手を撒くなら…

…………番棟………号室

地下……………だ……………


(声はそれっきり聴こえなくなった。だがその直前、人ならざる者が微笑みかけていたように見えた)


?:(……地下…………?確か出口への途中に……………)


(彼はふらつく身体を引き摺って、謎の声の示した場所に向かった。半ば意識が途切れていたからか、その後の記憶は思い出せない。)


?:(……ん?待て、あの声……姿………

……………まさか、こいつが俺を…!)


人間:………大丈夫、ですか?突然顔色が悪くなってますけど……


?:(…………俺は、いつの間に座り込んでたんだ?過去の事を思い出してたが……)


(あれほど拒絶していた人間に触れられても、彼は抵抗するそぶりを見せない。心なしか身を委ねているようにも見える)


人間:………?(何故抵抗しないのでしょうか。襲い掛かって来てもおかしくないのに…)


?:(…………一つ答えろ。お前は…あの時俺を助けたのか?)


院長:………何の事かな。そもそも普通の人間には僕の姿は見えないからね、幻覚じゃないか?


?:(…………あれが…"幻覚"だと…。なら俺は…偶然助かったと言うのか……確かにお前の声も、姿も……)


院長:ふふん。ま、あの場所…あの時間。確かに僕は…訪れていたよ。その事実を認識できたのはわんこ君、君だけだ。

だから…此処に来れたのはたぶん偶然ではない。素質があって…来るべくして来たんだよ。


人間:………師匠、先程の続きですが…彼を助けなかった理由は……?


院長:簡単な事さ。普通の人間には僕の姿は見えないって言ったじゃん?手助けしたくても…"出来なかった"のさ。


人間:………見えない……。まさか誰にも認識されないから、妨害することも…指示することも出来ないと?


院長:当たり。現にあの研究所…わんこ君が逃げた以外は異常はなかったと報告されたからねぇ。だから遊びに行ってたんだけどさ。

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