わんこ君3
院長:おいで、バカ弟子。ちょっと話そうよ。そのファイルも持って…
人間:あ……はい。
(二人は部屋を出ていった)
?:(……そういえば、俺の姿が変わったのに誰も驚きもしなかったな。"知っていた"のか…俺の正体を。
……なまじ理性があるから辛いのか。記憶も想いも無くなれば例え敵対しようが何も思わない、か……
化け物…か、笑わせる。
俺の意思じゃねぇよ……!)
(怒りからか人の姿に戻った彼は院内を彷徨く事にした)
人間:……あの、話とは…?
院長:うん、そのファイル見ててさ…何か気付かない?わんこ君の事とかさ。
人間:……実は一件だけ、この被験体7233番……彼に似ているような気がしてて。毛色とか年齢とか……
院長:正解。そのデータはまさしくわんこ君のだよ。だから言ったよね、人間じゃないよって……
人間:どうして、このファイルが今此処に……?偶然にしては出来すぎのような……
院長:あっはっは!このファイルはねー……とある研究所から棄てられたものなんだよ。
僕が時折出掛けてるのは知ってるでしょ?管理の緩い研究所に行ってさ、面白そうな研究を見てたりしてんだけどさ。
これは実験結果が芳しくないから、被験者ごと破棄したんだってよ。失礼な話だよね、全くもう…
どうせ棄てるなら…と思って失敬したらさ、近くで見付けちゃった訳さ。わんこ君をね…………
人間:……一目で分かったんですか?彼が被験者だったと……
院長:そだよ。気付かなかったみたいだね、その様子じゃ。
そんときのわんこ君ね、腕と首に怪我してたんだわ。電気枷で抵抗した火傷の跡。ファイルにも映ってるだろ、首元の部品。
人間:……あっ………!?まさか…あの傷痕って……
(人間は彼を見つけた時のことを思い出した)
(物音が聴こえますね…?師匠は三階に居るので違うはず。まさか………侵入者?)
(待合室の椅子には首筋と両手首に火傷の跡がある青年が眠っていた。傷のせいか酷い顔色で、やや息が荒い。)
大丈夫ですか?せめて眠るなら奥へ……
(彼の額に手を添えると熱があるのか、冷たい人間に触れられた彼は少しだけ頬を緩めたように見えた)
………どうやって此処にたどり着いたのか、いつ傷を受けたのか…色々気になりますが。
私は、私の仕事を全うしましょう。医者として……ね。一応、師匠にはお教えしておきますか。
(まさかあの傷痕が、枷に因るものだとは思いもよらなかったです。それに…師匠は彼に面識があった。もしかすると師匠が彼を連れて………?)
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