???の手記
人間は、自ら発展させた文明のスピードに…心の成長が追い付いていないのですよ。
知恵と感情を得た野生生物のまま…ね。
私から見る限り、今の人間は文明に使われていると思うのです。決して使いこなしている訳ではありません。
え。………かくいうこの私はどうなのか?ですか。
ふふ…"技術の発展それ即ち幸福"だと思っていましたよ、人間だった頃は。
私は、事実上不死の身体を手にいれました。ですが……"人として"の私は、その時点で死亡しました。
進んだ技術は確かに発展をもたらします。この技術で生き永らえる方が増えましたから。ですが、いざこの身体を手にして……なんと愚かな決断だったろうと。
今の私は、ただの道具として使役されています。かつて敵として戦った国に隷属して……
まさか死を恐れる側の私が、死を乞い願う立場になるとは思いもよらなかったですよ。
"死"……種族繁栄において最も敬遠される絶対の消滅。
自ら死を乞い願うのは、人間特有の思考だそうです。今となってそれが理解できるようになったのは、どういう皮肉なのでしょうね。
ずいぶん贅沢な願いですよね?"生きたくても生きられない人がいるのに"…
よく言われましたし、全くその通りです。目の前で失われゆく命を、ただ見送ることしか出来なかった時は、自らの考えを責めるばかりで……
これが、技術の発展で得た幸福なのでしょうか。死なない幸せで、人間としての心を失いつつある。
どちらが本当に幸せだったのでしょう、ね。
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