後編:記憶なしルート2

エル:確か……第2次大戦が起きたのはギヒノムが侵攻し、メラッドやコセムを壊滅させた直後だったと聞いた。侵攻の理由だが…より強い軍勢を選り抜く為だったとか。


ヘルム:…………ええと、それって……いつ起きたんでしょうか。私、長らく眠っていて…


エル:………約300年前だ。多少前後するだろうが、その辺りの出来事だ。


ヘルム:(………300年…私は眠り続けていた…)

結局、どうなったんです?


エル:…惨敗、だったと。例え生体魔導兵器だったとしても…冥界に入ったとたんに即死する事実は変わらなかった。


だから………俺らはヒトそっくりの人形に宿り、地上に分散している。マヴェットの連中に好き勝手されないために。そして……二度とヒトを道具にしないためにも。


ヘルム:………こんな…事って………

私達は…何のために…闘っていたと………?


エル:……………ほらよ。(剣を差し出す)

憎いんだろう?天使が。当事者でなくて悪いが………俺を攻撃して気が済むなら……


(ヘルムは剣を手に取るとエルに斬りかかる)


…………(さすが、元魔導兵器。このままなら…殺られるかもな。)


ヘルム:はぁ………はぁっ……!

何故………何故、止めて…下さらないんですか………?(泣いている…)


エル:………?…止めて欲しかったのか?ヒトとは…よく分からん生き物だな。


ヘルム:………天使に、ヒトの気持ちは分からないんですか…。


エル:生憎、天使はヒトが転生して生まれた存在なんだが…


転生の際は、全ての記憶も…感情も失う。理解できないのは至極当然だ。


ヘルム:なるほど…だからこんな冷酷な事が…平気で実行できるんですね。


エル:……ごもっとも。感情は存在しないがあんたの憎しみはさっきの攻撃で伝わった。殺ってくれて…良かったんだぜ。


ヘルム:………大切な人を………手にかける狂戦士にさせるなんて……酷い方ですね。


エル:……ははは。良識のある天使も居るんだが…俺はそうじゃないらしい。前世の影響かね。

さて………もう一度問おう。本当に俺の側に居たいのか?


ヘルム:……私は、何故かあなたが、知らない相手に思えなくて……例え憎むべき天使だったとしても…やはり……離れたく………ないんです……


エル:………ふーん。本当に…ヒトって不思議な生き物だな。俺は一向に構わんが。

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