門番

一ノ瀬:ね、卯月君。"あれ"の影響ってどういう事?


卯月:八重間君、待合室に向かう途中で体調不良を訴えていましてね。二回訪れて、その二回とも動けない程悪化しまして………


私は、霊障だと践んだのですが。


一ノ瀬:そっかぁ…門番のせいだね。そんなつもりはなかったんだけどな………


?:……………ふむ。ずいぶんと賑やかでございますね。生ける者の輝きが眩しい…。


?:(ああ、確かに騒々しいな……)


?:おや、狼様は冷静ですね。外の人間に興味がないのですか?


狼:(………俺の姿を見て、驚かない人間は居ない。そんな連中をいちいち相手にしたくもない。かくいう貴様こそ…ずいぶんと興味津々なんだな、ヨアヒムよ)


ヨアヒム:だって見ているだけで、ずいぶん楽しませてくれるではありませんか。私は好きですよ、生きている人間を眺めるのも、ちょっかいを出すのも。


狼:(……………そうか。ならお前は、気に入った人間は居るのか?)


ヨアヒム:強いて言えば……神是樹様、でしょうか。私にも対等に振る舞う様は…とても若い方とは思えません。


一ノ瀬:や、ちょっと良いかな、二人とも?


狼:(どうした?奴等の相手をしなくて良いのか)


ヨアヒム:……こほん、何なりとどうぞ。


一ノ瀬:ごめんよ、ヨアヒム君。君が展開している結界、少し弱めて欲しいんだ。


ヨアヒム:……………む。宜しいので?あまり弱めてしまうと人払いにならぬのでは……


一ノ瀬:うん、そうなんだけどさ…一人、その影響で調子が悪くなっちゃってる子がいるの。


大事なお客さんだから……ね。


ヨアヒム:ふむ、心得ました。


狼:(客人、か。お前が人間を受け入れるとはな)


一ノ瀬:旧い知人と、その連れだよ。機会があれば紹介するからさ。


狼:(……俺は要らん。騒がしい連中なのは分かっている)

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