案内

八重間:………お願いします。


(卯月は八重間を連れ、先程出会った一階を訪れる。廊下を進むほどに、八重間の顔色が悪くなっていく)


…………はぁ……はぁ…(ま、まただ…急に、調子が…………)


卯月:………ふむ、調子が悪かったのは場所のせいでしたか。(つまり、彼一人では近寄ることすらままならないと…?用意周到ですがそれでも感心できませんね)


八重間:うっ…!頭が………


(奇しくも、先程取り押さえられた同じ場所で動けなくなった八重間。卯月は彼を抱えあげるとそのまま進み始めた)


卯月:実は、この先が受付及び待合室なんですよ。ただし、この場所は他の部屋と同じで……殆ど機能していないんです。ご覧ください、これが…貴方の探していた出口です。


(たどり着いたそこは…封鎖された出入口と、荒れ果てた待合室だった)


八重間:そ、そんな…。出口が、無いなんて…


卯月:出入口として使用されている通用口は別にあります。貴方達が通ってきた場所も、恐らくその通用口でしょう。言った筈です、我々は追われる立場にいると。


普通の者が誤って迷い込まないよう、そして追っ手が来られないように、その通用口も立ち入り禁止区域に繋がっています。なので……許可なく外へは、出られないとお考えください。


八重間:…………!?じゃあ、俺たちはずっと…出られないんですか?


卯月:いえ、さすがにそれは無いでしょう。貴方達をこの病院に収容したのは日向ですから、目的を満たせばすぐにでも出られますよ。


……さて、戻りましょうか?この場所にとどまるのは貴方にとっては賢明と言えないようですから。


(卯月は八重間の体調不良が"霊障"の一種であると見抜き、返事を待たずにその場を後にした)


八重間:(……なんで、急に調子が悪く…………?離れたとたん、身体が楽になったけど……)


卯月:ちなみにこれから、貴方はどうするつもりなのですか?


八重間:俺は…雨龍と悠人に会いたいんです……


卯月:分かりました、とりあえず天野君の病室へご案内します。多分乙梨君にも会えるとは思いますが。


(そう言うと卯月は、二階の自室よりも奥にある病室を訪れた)


………失礼します。


(その部屋には、天野が寝かされている。だが乙梨の姿は見当たらなかった。卯月に下ろしてもらった八重間は、覚束ない足取りでベッドに近寄ると天野の手を握る。眠っているせいで反応は返ってこない)


卯月:(一ノ瀬さんはともかく、乙梨君は何処に?てっきりこの部屋で付き添っていると思ったのですが…)


(その時、病室の戸が開く。卯月が振り返るとそこに居たのは……)


………一ノ瀬さん、それに乙梨悠仁君も?二人とも何処に行ってたんですか。


一ノ瀬:ちょっと、ね。色々大事な話をしていたのさ。


乙梨:あのね、初めまして。どうして僕のお名前知ってるの?おじさんはだあれ?


卯月:初めまして、私の名前は卯月。日向や一ノ瀬さんと同じく医者なんです。


乙梨:そっか、もしかして日向さんから聞いてたの?


卯月:ええ。八重間重悟君が起きたので一緒にこの部屋に来ました。


乙梨:起きたの、重悟?良かった!雨龍にも会えたよ!


(乙梨は八重間の隣に走り寄った)


八重間:…………。


(だが、八重間は何の反応も示さなかった。不思議に思った乙梨が顔を覗き込むと……そのまま八重間が倒れこんだ)


乙梨:重悟!?どうしたの?ね、大丈夫?


卯月:八重間君!まさか……"あれ"の影響がまだ………?先程から体調がすぐれないとは言ってたのですが…

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