焦燥

<その時、別室では…>


神是:………誰も、助けてくれない…か。親が居ないという話も…在学中には知り得なかった。


それとも最近の話なのか…?


(目が覚めた八重間は、乙梨の姿を探すがその部屋には自分と神是しか居なかった)


八重間:くっ………ここは…何処だ?………悠人……返事をしてくれ!


神是:……!大人しくしていろ、八重間重悟。乙梨悠仁ならば別の部屋にいる。


八重間:神是てめぇ………!悠人に何をしやがった!?


(八重間は起き上がると神是に殴りかかった)


神是:………ぐっ。(な、殴られた……。もう戦うな、と日向さんに言われているから反撃できないが…)


八重間:………悠人を、返せ!


(次に放たれた一発は、神是の溝尾にヒットしそのまま動けなくさせた。逃げ出した八重間を制止することもできなかった)


神是:………日向、さん…。すみません…………


<廊下にて>


八重間:何処だ、悠人!返事をしてくれ!(広い……一体何なんだここは?まるで、廃墟のような…人の気配が全くない。まさか俺たち、神是に嵌められて監禁されたのか………!だとすれば、出口も捜しておかないと…)


(八重間は悠人を捜す序に、一階を探索し始めた。どの部屋を覗いても荒れ果てて放置された酷い有り様で、よく調べなくても手掛かりは無さそうだった)


何故だ……?何故こんな廃墟に、俺たちを連れてきた?神是、てめぇは……何者なんだ…!


?:………どうかしましたか?酷く慌てているようですが。


八重間:…………!?(だ………誰かが、ついてきてたのか……!)


(急に金縛りにあったかのように身体が動かなくなった。得体の知れない恐怖が、全身を支配する。


声の主を確かめようにも、本能的に身体が拒絶する。冷や汗が滝のように落ち、立っていられなくなった)


?:………駄目じゃないですか、そんな体調で動き回っては。


(座ったまま動けない八重間の身体に、何者かの手が触れる。右手は左胸に、左手は額に添えられた)


八重間:…………!(に…逃げられない……!振りほどこうにも、身体の力が……抜けて…)


?:そのままで結構です、ゆっくり深呼吸できますか?焦らなくて大丈夫ですから……


(思うように身体が動かない八重間は、その指示に従うしかなかった。だが、そのお陰で少し調子が落ち着いた)


八重間:(触れるだけで…何もしてこない………?何が目的なんだ…)


?:落ち着いたようですね。大丈夫だとは思いますが、もう少し私の部屋で休んでいきなさい。道に迷ったのであれば、その後でご案内しますよ。それで構いませんか、八重間重悟君?


八重間:ど、どうして俺の名を………


?:それも含めて知りたいことがあればお話しますよ。さ、私に掴まってくださいな。


(彼は軽々と八重間を抱き上げると、二階の自室へと案内した)


えーっと…座れますか?目眩やふらつきがあるなら横になっても構いませんよ。


八重間:(寝たくはないけど……今は、座ってるのもしんどい………)


(八重間は耐えきれず、下ろされたベッドに横たわった。恐怖は収まったものの、動悸が酷く起きていられないのだ)

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