事情聴取

<拿捕から数時間後>


(意識が戻った乙梨は、目を閉じたまま自分の枕元を探る。見付からないと分かって、そのまま懐に手を突っ込んで探している)


日向:………これを、お探しですか?


(そう言うと日向は、彼が手合わせ前に掛けていた眼鏡を手渡した)


乙梨:………うう………ん…?つ、つよすぎる…………痛い………


日向:………え?"強すぎる"……んですか?(確かに、彼の眼鏡なんですけど……)


(その様子を見た神是は、先ほど見つけた"もう一つ"の眼鏡を彼に掛けた)


神是:目を……開けてみろ。


乙梨:………あ………見える?


("正しい"眼鏡を着けてくれた人物を見ようと、ふらつく身体を無理やり起こした)


……いつき?いつきが…………着けてくれたの?


日向:樹……その眼鏡は一体?


神是:お前の懐に入っていた、もう一つの眼鏡だ。以前から二つ所持しているのは知っていたが……


用途は今日、初めて知った。


乙梨:………そっか。ありがと、樹。さっきはごめんね、痛かったでしょ?


神是:(………?何故俺は、こいつに謝られている……?)


日向:話の続きは、横になってからの方が良いですよ。もう誰も、襲い掛かったりしませんから……


乙梨:………うん。


(彼は、驚くほど素直に日向の指示に従った。とても直前迄……臨戦態勢だったとは思えないほどに)


日向:樹は………答えてくれませんか。なら、私からの質問に答えてくれませんか?


乙梨:………うん、いいよ。


日向:ありがとうございます。まず、あなた方の名前を教えてくれませんか?


乙梨:あのね、僕の名前…乙梨悠仁(おとなしはるひと)だよ。


えっと……もう一人はね…八重間重悟(やえましげさと)なの。


たぶん、樹は僕たちの事知ってる。同じ学校の、卒業生だもん。


神是:………"問題児"だからな、お前は。


乙梨:えへへ……言われちゃった。


日向:………あ、ええと……そこまで掘らなくて結構です。お二人は、こんな時間に何をしていたのですか?

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