悲痛な思い2

<日向の部屋にて>


八重間:……うっ…………(身体が…動かない……)


日向:お目覚め、ですか?八重間君。


八重間:あんたは……………どうしてここに………(に、逃げ……ないと……)


(八重間は動かない身体を引き摺って逃げようとする。だがあっさり阻止されてしまう)


日向:待ちなさい。どうして逃げるのか……せめて教えてくれませんか?


八重間:……断る。人間なんか、どいつもこいつも………同じだ!


(八重間の頭の中では、過去に罵倒された言葉がこだましている……


"嘘つき八重間!"


"男の癖にかまってちゃんなのかよ、ダサい"


"具合が悪そうなふりしてサボってんじゃねーよ!!"


その声がこだまする度、胸元に鋭い痛みが走る。全ての元凶となった痛みが………)


…………くぅ……っ!


日向:…………!しっかりしてください、八重間君……どうしてそんな状態で抱え込むんですか……!


(日向が八重間に触れようとするが、その手を払いのけた。


苦悶の表情を浮かべた八重間は……溢れる涙を拭おうともせずに日向を睨む。)


八重間:……嘘つき呼ばわりは………

もう、まっぴらなんだ!


そんな思いをするぐらいなら……

俺の痛みなんか……"気のせい"で……

それで良いんだ!


どうせお前だって……すぐ俺を見放すさ。何を調べても原因不明で……匙を投げるに決まってる!


何度人間に期待して、何度失望すればいい!?挙げ句に嘘つき呼ばわりと来たもんだ……


俺だって…………わざとこんな事やってんじゃねーよ!だが、自分すら信ずるに値しないとでも思わなきゃ…………やってられっかよ。


分かったら、もう俺を自由にしてくれ。これ以上の検査も治療も……もう今となっては望んじゃいねえ。


全部気のせいなんだからな。


(そう吐き捨てると、八重間は部屋を飛び出した。後に残された日向は……八重間が言った言葉を思い返すのが精一杯で、追い掛けることはできなかった)


日向:…………"嘘つき呼ばわり"……"匙を投げる"………"自分すら信ずるに値しない"……


一体、貴方は……過去に何を経験して、そう思うようになったのですか。自分が自分を信じられないなんて、そんな悲しい事…………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る