天野の記録アナザー2
天野:………賭け……ですか?
一ノ瀬:うん。理論上は成功する、ある治療法を君に試してもらうのさ。後は臨床試験だけなんだよ、なかなか病気の人を連れてくるのも大変でさ………ね、お願い。妖(ひと)助けだと思ってさ。
(悪戯っぽく笑いながら、天野の答えを待つ一ノ瀬。さながら無邪気に楽しむ子供のようだ)
天野:(………確率は、二分の一か…………。確かに病気が治ったら、虐められないで済むのかな…)
……分かり……ました。その賭け、乗らせてください。
一ノ瀬:ふふ……ありがとう、天野君。僕は準備するから暫く休んでなよ。
(一ノ瀬はそう言うと、楽しそうな様子で部屋を後にした)
天野:(そういえば、この部屋って…よく見たら、手術室なのか……。全然、気付かなかった。
まさか………地下水道から、あの廃病院に繋がってるなんてな。
"隠された地下室がある"………って噂は、こういう意味で真実だったのか。)
(容態が落ち着いて、一人きりになった天野は……改めて自分が連れてこられたこの場所に思いを巡らせた。)
(………地上の入り口は封鎖されて、簡単に入ることができなかったけど…いつか来たいと思ってた。まさか………こんな形で、来ることになるとは思わなかったけど。
そう言えば…どうして僕は、あの人が見えたんだろう?普通は見えない、って感じの言い方だったような……
……死にかけてたから、とかかな…?でも、それが正解なら………身体が治ったら、もう会えなくなるのかな。
それは……ちょっと寂しい。複雑な気持ちだな…………)
(色々と考えているうち、いつの間にか眠ってしまった天野。暫くして一ノ瀬が戻っても、全く目が覚める気配がない)
一ノ瀬:そろそろ始めるよ……って、寝ちゃってるんだね。まあ良いや、承諾は得てるし……(何より、もう一人の被験者の事は……見ない方がいい。顔見知りだもんね)
<処置完了後>
(3日経って、相変わらず天野は眠っている。懸念事項だった、移植の際の拒絶反応もなく……結果は成功に終わった)
(後はこの子が起きてくれれば、経過観察を経て実験は終了。久しぶりに身のある実験ができたよ……ふふん。)
天野:…………うっ……(俺、ずいぶん長く寝てたんだな…………戻ってたのか…)
一ノ瀬:や、起きたね。おめでとう……"賭け"は成功だよ。
天野:(………成功…?いつの間に……)じゃあ僕、生きてるんですか………
一ノ瀬:うん、そだよ。おそらくもう発作は起きないと思う。
天野:…………そっか……良かった。もう会えないかと……思いました。
(自分の仮説が否定され、再び一ノ瀬に会えたことが嬉しかったのか…思わず顔が綻んでいた)
一ノ瀬:………え?どういう事?
天野:あ、な…………何でもないです。(しまった…うっかり言っちゃったよ…)
一ノ瀬:………?(後遺症…じゃないよね?ちゃんと検査しとかないと不安だな、この子。)
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