治療を受けない自由2

(少しして一ノ瀬が、薬とカードを持って戻ってきた。そのカードを八重間の首にぶら下げると薬を手渡した)


一ノ瀬:じゃ、飲んでみてよ。その薬ね……僕が作ったからさ。


八重間:………あの、これは?


(八重間は不審な顔で首元のカードを示した)


一ノ瀬:ああ、生体監視ログだよ。さっきも言ったけど、この薬はまだ試作品だからね……副作用が無いかどうかをチェックするの。


既製品の薬だったらそんな必要は無いんだけどさ………効きすぎて異常をきたさないか気になってさ。


八重間:………そう、ですか。


(カードが気になるが、とりあえず痛みが引くのを願って薬を飲む。


効き目の強い薬、とは強ち嘘ではなかったらしい。ものの5分ほどであの痛みが引いた)


………痛みが、消えた…。(あんなに、痛かったのに……)


(ふと一ノ瀬の方を見ると、手元の端末に目を通しているようだ)


一ノ瀬:………あ、そうだ。痛みが治まっても後一時間は様子を見させてくれないかな?


八重間:……………?何か、あるんですか。


一ノ瀬:実はさ、飲んですぐは副作用って出ないことが多いんだ。早くて30分後とか。


万が一副作用が出たらそれは治すから安心してよ。苦痛を取るために呼んだからね。逆の結果になったまま、帰すつもりはないから。


八重間:どうして………一ノ瀬さんは、俺の考えを否定しないんですか?あの人(日向)みたいに……


一ノ瀬:………八重間君。医者は本来、治療を強制する権限はないんだよ。あくまでも患者の意思を尊重する。


そして、病状を鑑みた上で…僕達から治療を止めるか提案することもあるんだ。


八重間:……………医者から、そんな提案を…?


一ノ瀬:うん。今からする話は……八重間君には当てはまらないけどね、不治の病にかかった患者さんの話。

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