治療を受けない自由1
八重間:(………ぐっ…!"あの時"と同じくらい………痛みが………)
(廊下の壁にもたれると、そのまま座り込んだ。幸いなことに、人通りがないので……しばらく休むことにした)
(…………点滴を打ったとき、痛みが強まったが…今はそれくらい強く痛む。多分、立ってられない……)
(自然と呼吸が荒くなる。どうにもならないと分かりきってはいるが……なんとか痛みを抑え込もうと、胸元に手を添える)
………はぁ………はぁ…い、痛ぇ……っ……!
(目を閉じて集中していたせいで、声を掛けられるまで誰かが側に寄ってきた事に気が付かなかった)
一ノ瀬:………八重間君。痛み止めは飲んでないの?
八重間:………………!く、薬なんか……効かないもん、飲まない……
一ノ瀬:へぇ……効かないからずっと我慢してるんだね。しんどいでしょ?
八重間:べ、別に今更………!それにもう、慣れた……。
一ノ瀬:………一ついいかな、八重間君。診断や治療を受けないのは君の自由だ、僕もそれを否定する気はないし……無理強いはしないつもり。
だけどさ………せめてその痛みは取ってあげたい。ね、僕の部屋に来ない?効き目の強い痛み止め、分けてあげるよ。
八重間:強い、痛み止め………?
一ノ瀬:うん。それにこのままじっとしてたら……また日向君に捕まっちゃうよ?拒絶されても懲りないからね、彼。
(八重間はその誘いに乗るか、判断しかねていた。だがあの日向に捕まるよりかは、と判断してついていくことにした)
八重間:………お願い、します。連れていってください。
一ノ瀬:りょーかい。動けないんだろ、僕の背中に乗って。
(背負われた八重間は、一ノ瀬の言葉を反芻している)
八重間:(診断や治療を受けないのは、俺の自由……嘘でも初めて言われたな………医者は全員、治療を押し付けてくる奴だと思ってた。相手の思いも関係なく……
……でも、そういえば。薬を飲んだか、とは言ってたけど……それ以外は聞かれなかった……
あいつなら根掘り葉掘り、今の体調について聞いてくるのに……)
<一ノ瀬の研究所>
一ノ瀬:よし、楽な体勢で待ってなよ。持ってくるからさ……
(そのまま奥の部屋に行ってしまい、八重間は実験台に残された)
八重間:(……別に、どんな体勢って指示もなかった。座ったままで良いか…。何となく、寝そべるのは嫌だな………)
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