第2話

「よし、今日はここら辺までだな、ちゃんと復習する様に。あと、最近物騒だから寄り道とかしないように。」

予備校の講師が1時間半の授業の終わりを告げる鐘とともに授業の終わりを宣言した。

生徒ははーいとバラバラに答え、荷物を鞄に詰め込み始めた。

俺もノート、教科書、筆箱を鞄に詰め、暖房のせいで蒸し暑くなっている予備校の建物を後にする。

建物を出た瞬間、厚いところにいたせいで熱くなった頬を冬の冷たい風が撫でる。昔から暑がりで、冬でも半袖短パン、靴下なんて暑苦しいから嫌だと言う理由で履かない、小学校に1人は絶対いるやつだった。

俺は、こんないい感じに寒い日には行くところがある。大きな桜の木がど真ん中にある公園だ。イアホンを耳の穴に差し込み、気に入っているアルバムをかける。予備校の講師がなんか言っていたような気がしなくもないが、俺はこの気温に興奮してそんなこと覚えていなかった。

季節は冬だから当然木は枯れている。木のちょうど下にある古ぼけたベンチに座り込み、物思いに吹ける。

三十分くらい経っただろうか。腕時計に表示されている時刻は十一時を指していた。あまり帰りが遅いと、母が心配するから、ベンチから立ち上がりリュックを背負う。

シャッターの下がった商店街を通り抜け、住宅街に入る。眠気を抑えながら、いつも通っている同じ道を通り、家の前に立つ。

リュックの中を鍵を探すためにゴソゴソと探る。本当に入れる場所を覚えとかないとなとかと思いながら、探し当てた鍵を少し誇り高く持ち上げ、鍵穴に差し込む。

「ただいま」返答が返ってこない。「みんな寝たのかな」

鍵を閉め、二階に上がる。電気をつけ、水を汲みに行こうとキッチンに向かって歩く。

冷たい水を踏んだような感触が足につく。

なんかこぼしたのかな?と思い、床を見る。

可愛い妹の頭がこっちを見ている。の中に。

何が起こっているのかが瞬時にはプロセス出来なかった。

身長がなかなか伸ないと言うことでよくいじってた妹の体が

思わず悲鳴を上げた。俺はそれ以降を全く覚えていない。近所の人が警察を呼んでくれたらしい。見たものを全く信じたくない。警察は俺をどこかの部屋に連れて行ってくれた。

警察官が何か質問をしてくるが、俺はなにを言われているのか理解できない。

数十分かしただろうか。新しい人が来た。

「こんにちは。広瀬百合と言います。」彼女は俺がなにも答えないことを知ると俺を立たせて彼女の乗ってきた車に乗せられた。





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