第3話君の中の僕

緑の多い大学の構内で君はおどける。


「私があなたの前からいなくなったらどうする?」


「多分あなたは変わらず珈琲でもすすってそう」


揺れる車両のきしむ音で目覚める。


窓にスライドのように彼女の憂い顔が映っていく。


「(気が付かないだけで罪だぞ)」


まだ君の中に僕は住み続けてるんだろうか?


「(霧の中に迷い込む気か)」


まだ間に合うのだろうか。


「ねえ、私の手紙取って置いてくれてる?」


茶色のコートの紳士は目をつぶって静かに佇む。


「次に生まれ変わったら、また会えるかな?」


窓に寄りかかるとエアコンのぬくみで眠くなってくる。


「私だけでなくあなたが今にも霞んでいきそうな予感はあるのよ」


2019(R1)9/6(金)

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