5 桜川教授はフリーデの母国に送還された。


 桜川教授はフリーデの母国に送還された。私はどうしても桜川教授が悪人には思えなかったので「寛大な措置を」と頼み込んでおいた。

 元気でやっているかどうかは詳しく知らない。あの日以来教授とは会っていないし会おうともしていない。

 また気まぐれでフリーデが数学の難問に挑戦し始めたら呼びつけるかもしれないだろう。

 少なくともその次の日からフリーデと過ごす騒がしい日々が始まった。

「ご注文の数、用意できましたよ~!」

 地下倉庫で拷問器具職人のシャサが掛けてくる。

「随分遅かったな」

「うう、すんまへん……」

 私がシャサから弾薬を受け取り、返しに金を渡す。そうしていると突然上から叫び声がした。

「ぎゃー!」

 それはどう聞いてもフリーデの声だったので心配した私は駆け足で階段を登って扉を開いた。

「うほへー! 目が回るー!」

 そこには円盤の拘束台に拘束されグルグル回っているフリーデの姿があった。

「何してんだフリーデ……」

「ムラサキー! 助けてくれー! 一度拷問って奴受けてみたくてさー! この有様よー!」

「ばーか」

 私は苦笑しながら円盤を止めフリーデの拘束を解く。

 目を離すとすぐこれである。やりたいことを我慢できず必ず実行するのがフリーデだ。

 私はそんなフリーデから自分自身が何をやりたいか学んでいくのだ。

 まだやりたいことは見つかっていない。むしろ「やりたいことを見つける」という事自体が私がやりたいことなのかもしれない。

 それでも構いはしない。フリーデと一緒に居るときは本当に飽きないし、楽しいのだから。

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