第5話 専業主夫?

 家の中に入ると、トイレや風呂などを一緒に見て回った。

その後は、3人でトランプをして遊んだ。


夕方になると、太陽がキッチンに立ち夕食を作り始めた。

令子は学校から持ってきた絵本を読み聞かせてやっている。

いつも帰りが遅い令子よりも、太陽の方が食事を作ることが多い。専業主夫ですべての食事を用意するわけではないが、ご飯とみそ汁はいつも切らさず作っておく。朝は、それぞれが好きなおかずを作って食べて、夕飯は、令子の好きな餃子を包んでおいて、帰ってきたら焼いてやったり、麻婆豆腐などを二人分作って残して置いたりしている。令子の買ってきた食材があれば、それでおかずを作っておくこともある。

 あまり全てをやってしまうのも、妻の沽券にかかわると思い、掃除は令子に任せている。だから休みの日にまとめてやっているようだ。洗濯は自分のものをそれぞれが洗う。これは、太陽が退職前からしている習慣だ。


 今日はハンバーグだ。豚挽肉と玉ねぎのみじん切りをこね、形を器用に小判型に整え、真ん中をへこましてフライパンにのせ、ふたをして上手に焼く。太陽は子供のころから、料理が好きで、母親が作るのを見て、小学校の高学年の頃には、自分でラーメンやカレーを作っていた。大学時代は地元を離れていたので自炊で、昼食以外はすべて自分で手作りしていた。そして、料理の本を買ってレパートリーを増やしたほどだ。料理をするとストレスが発散できるタイプだ。


 食卓に並べて、太陽と令子が手を合わせると、紗音瑠も慌ててまねをして、三人で「いただきます」をした。

 メインのハンバーグは、まわりはカリッと焼けていて、ナイフで切って押すと肉汁が溢れた。太陽は我ながら満足し、肉を噛み締めるとすかさずご飯を口に入れ頬張り、幸せを味わった。紗音瑠もおいしそうに食べた。だが、付け合わせのバターソテーの人参とインゲンには手を付けずに、ポテトだけを食べた。

 太陽は何も言わずに、それから一週間、鈴木家で食べるいろいろなメニューを作り、紗音瑠が何を食べて何を食べないのかを記録した。料理は一人一人に小皿に取り分けておくので、紗音瑠が何をどれだけ食べたかがすぐにわかった。


 その日は紗音瑠は太陽と二人で風呂に入って、太陽と令子の間に入り、川の字になって眠った。太陽が子守歌を歌ってやるとすぐに小さな寝息を立てた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る