第4話 我が家へ

 葉桜の新緑が目に優しく光る頃、鈴木夫妻は揃って児相へ紗音瑠を迎えに来た。

田中が、教科書の入ったランドセルとバックを一つ持って、紗音瑠を連れてきた。

「こんにちは」太郎が言うと、

小声で恥ずかしそうに少し頭を下げながら紗音瑠が応えた。

「こんにちは」

「えらいわね、きちんとあいさつができて」令子が言った。

「きょうからおじさんが、紗音瑠のお父さんだよ。そしておばさんが、お母さん」

「よろしくね」令子が手を差し出すと、

紗音瑠も手を出し、恥ずかしそうに握手した。

「それじゃあ、よろしくお願いします」田中が荷物を手渡した。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」太陽が受け取り、車に乗り込んだ。

紗音瑠は後部座席に令子と座った。

「しゃあちゃんは、食べ物は何が好きなの?」

「カレーと、ハンバーグ」呟くように答える。緊張しているようだ。

「嫌いなものはあるの?」

「ピーマンと人参」

「虫が好きなんですって?」

「うん」

児相から30分くらいで我が家に着いた。令子はさすがに小学校の教員だけあって、紗音瑠の会話を引き出し、うまく打ち解けたようだ。


「ここが紗音瑠の家だよ」太陽が言うと、

「あっ、ニワトリがいる」紗音瑠が近づく。

「ああ、烏骨鶏という種類の鶏だよ」

「かわいい。ヒヨコもいる」

「生まれて一か月くらいだよ」

紗音瑠は飽きずに眺めている。どうやら気に入ったようだ。

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