魔王のいない時間
「アザレア、お前とは婚約破棄だ」
私を睨み付けるのは一度は想いを寄せた婚約者の王子。
その傍らに寄り添うは見覚えのない少女。
「私の愛するミリア男爵令嬢に度重なる嫌がらせを行い、彼女を亡き者にしようと計画までしたようだな……生憎ミリアがそれに気が付いて私に訴えてきたから防げたものの……その様に嫉妬に狂った者を国母には出来ん」
「アザレア様、罪を認めて謝ってください。そうすれば殿下はきっと許してくださいますわ」
(認める?何を?この人間たちはやってもいない事を認めろと言うの……?こんなに大勢の貴族前で)
本来は私と王子の結婚を祝う婚前パーティーのはずだった。
「さっさと認めろこの毒婦め!」
「あなたが妃になるなどあり得ない!」
王子と同じ様に私を追い詰めるのは通っていた学校の教師と、私の幼馴染みである騎士団長の息子。
「あ、謝るも何も……私は何もしていません!」
「反省もなしか、呆れるな。殺人に並びその殺人計画を立てることも重罪だ!アザレア、お前を死刑にする! 」
「そんなっ!?本当に私は何もしておりません!」
抗議するもその瞳は冷たい。
慌てて両親がいる方向を向けば両親も同じ目を向けていた。
「私たちの育て方が間違っていたようだ……公爵家に泥を塗りおって……この恥知らずが!」
「人を殺す計画を立てるだなんて……なんて恐ろしい子なの、あなたなんて産まなければよかった!」
「こんな者が妹だなんて虫酸が走る、今すぐ俺の前から消え失せろ!」
冤罪なのに家族すら信じてくれない。
両親も兄も嘘のように言葉の刃で私を串刺しにする。
じわりと視界が歪む。
その端で王子に寄り添うミリアがにぃっと唇を吊り上げた。
これは彼女が仕組んだことなのかもしれないという考えが頭をよぎる。
そうでなくとも彼女は私が追い詰められているこの状況をみて楽しんでいるのだ。
なんて性根が腐っているのだろう。
こんな女に負けてたまるか。
私が無罪であることは誰よりも私が知っている。
折れてたまるか。
泣いてたまるか。
ふざけるな。
両親から視線を反らしゆっくり目を閉じると、深く深呼吸してまっすぐに婚約者である王子を見据える。
「私は無実です。あなた方が私を貶めようとそれは事実ですから。私はやってもいない罪を認めたりしません」
胸を張って堂々と告げる。
「愚か者め……!もういい、連れていけ!」
あっという間に兵士が私を取り囲む。
正直なところ足は震えてるし、これから自分の身に起こるかもしれないことを考えると怖い。
それでも私は屈しない。
こうして私は冤罪で投獄された。
その翌日に魔王を名乗る青年に求婚されるなんて思いもしなかった。
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