三日目

「こんにちは、呼ばれて飛び出たあなたの魔王です」


「呼んでません」


「今日は昨日お話ししたクッキーを作ってきましたよ」


「結構です」


「味見は部下にさせましたので保証できます、美味しさのあまり震えが止まらないそうです」


「保証どころではないですね」


「チョコとナッツとプレーンがありましてお勧めは私との口移しです。ちなみに当たりのクッキーには結婚指輪が入っています」


「異物混入、駄目絶対」


「飲み込んでも魔法で取り出せますからご安心を」


「安心要素がまるでないですね」


「…はっ!もしや口移しをご希望で!?」


「言ってません」


「アザレアは大胆ですね……初めてなので優しくしてください」


「頬を赤くしないでください」


「おやおや、照れ隠しとはまた可愛い」


「どこをどうしてそうなった」


「しかし初めての口付けは、やはりもっとムードがある中でしたいものですね」


「勝手に口移しから口付けにすり替えないでください」


「アザレアと初めての口付けを交わす時までにムードの勉強をしておきましょう」


「未来永劫来ないと思います」


「あ、クッキーは置いていきますからお友だちにも分けてくださって構いませんよ?『魔王のお手製愛情クッキー』はまた作れますから」


「名前がそのまんま……」



ストーカー魔王はネーミングセンスがない。


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