二日目


「こんにちは、お嬢さん。約束通りまた会いに来ました」


「約束してません」


「お嬢さんでは他人行儀ですね、是非名前で呼ばせてください」


「他人です」


「確かお嬢さんのお名前はアザラシ、でしたか?」


「誰が水生哺乳類ですか」


「失礼、アザレアでしたね。愛らしいお名前だ」


「呼ぶことを許可した覚えはありません」


「アザレアの事をもっと知りたい、私はあなたに近付きたいのです」


「物理的に近付かないでください」


「何か欲しいものがあればいくらでもプレゼントいたしましょう」


「人の話を聞きましょう」


「あぁ、お菓子をお持ちしましょうか?それとも綺麗なドレス?可愛いぬいぐるみ?何でもご用意できますよ」


「結構です」


「では次来るときはクッキーを作ってきますね」


「もう来ないでください」


「私はこれでもお菓子作りには定評があるんですよ」


「自慢ですか」


「もちろん魔法は一切使わない、安心安全のお手製です!」


「逆に不安しかありません」


「アザレアに贈る分はたっぷり愛を込めて作りますね」


「受け取り不可です」


「おぉっとこうしてはいられません!今すぐ最高の材料を準備しなくては!アザレア……名残惜しいですが明日までの辛抱です、また明日必ず会いに来ますから。寂しい思いをさせて申し訳ありません」


「寂しくないです」


「私の愛しい姫君は強がっておいでなのですね、あぁなんて愛らしい……!」


「頭がお花畑なんですね」


「しかし明日の準備もありますので今日はこれで帰ります、また明日お会いしましょう」


「衛兵さん、ここに塩を撒いてください」


ストーカー魔王は令嬢にクッキーをつくる約束をした。

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