第32話 死闘
前回のあらすじ!
無理矢理パーティーに入ってきたエオラを加え、一向は第6階層の地図の作成にとりかかった。そして、第6階層にいた魔物の名はガダゴ。それは飛ばない鳥の魔物であり、巣にあったのは卵であった。
「さあ、これでアレが作れるね! 地上から砂糖と牛乳を運んできた甲斐があったよ」
アレとは俺が教えた、あのスイーツである。卵と砂糖と牛乳で作るのは、プ……
*******
第6階層の奥には泉があった。その周囲に岩以外に何もない空間が広がっている。さらに進めば食べることのできる植物が群生している場所もある。普段はほとんど魔物すらいないこの空間で、似つかわしくない爆音が響く。
「
辺り一面が焼き尽くされる中、俺はローブを脱ぎ捨てる。中には楔帷子を着込んでいるが、それすらも動きの邪魔に感じた。
「今日という今日は許さぬ! 死ぬがよい!」
「それはこっちのセリフだ!」
岩陰に隠れながら死角を進む。たまに
「ええい、まどろっこしい!
ジジイが魔物の召喚をした。なかなか攻撃が当たらない俺を拘束するためにガルーダという怪鳥を召喚したようだ。上空から、急降下で俺を狙ってくる。迎撃した時にタイミングを合わせてガルーダごと攻撃するつもりだろうが、そうはさせない。
「ふっ!」
近くに落ちていた石を投擲する。石つぶてがガルーダの首に激突し、怪鳥を地に落す。その間にジジイとの距離を詰めた。迎撃の魔法を詠唱させる隙は与えない。
「ちっ、
防御魔法は攻撃と違って即発動する。ジジイを
だが、
「オラオラッ!」
オリハルコンハンマーを叩き続ける。いくらジジイの魔力が膨大だといえ、何度も戦士の強撃を受け続けると
「ふんっ、あまいわい!」
だが、ジジイは俺の攻撃に合わせ
「
そこに魔法を撃たれてしまう。避けるためには距離を置かねばならなかった。ジジイはさらに後方に距離を取る。さらには石つぶてでダメージを追っていたガルーダが復活して後ろから襲い掛かろうとしていた。
「
ジジイは空へと逃げる。後方から襲い掛かってきたガルーダの嘴と爪を避け、ハンマーを脳天に叩きこむ。だが、ガルーダが沈黙した時にはジジイの詠唱が完了していた。
「死ぬがよい!
最強破壊魔法「
「うらっ!」
投げたのはオリハルコンハンマーであり、近くの地面に刺さる。爆音と共に即席の避雷針に吸い込まれる
「何じゃと!?」
最強魔法を防がれた動揺があったのだろう。
「逃がさんっ!」
「ええい! 離せ!」
跳躍してジジイの右の足首を掴む。そのまま地上に引きずり降ろそうとしたが、ジジイの
「うりゃうりゃ!」
反対の足首も掴む。ジジイが付け焼刃の剣で手を払おうとするが自分の足も傷つけそうで思い切って振ることができていない。その間に腹筋に力を入れ、足をジジイの肩に絡ませる。
「ぶはっ!」
さすがに集中も途切れてしまい、二人して落下することになるが、こうなればこっちのものである。ジジイが起き上がるまでに拳を叩きこむ。しかし…。
「
一瞬にしてジジイの体が硬く硬直した。叩きこんだ拳の方が壊れそうである。
「ふはははっ、これならお前さんの攻撃は効かん!」
「なんてでたらめだっ!」
だが、俺も手がないわけではない。すぐさま避雷針に使っていたオリハルコンハンマーを回収する。かなり熱を帯びているが火傷をするほどではなさそうだ。ぐっと我慢する。ジジイは
「いつまでその体がもつかな!?」
思いっきりハンマーを振り回す。直撃したジジイが吹き飛ぶが、
「おのれぇ! いくらダメージがなくともムカつくのう!」
しかし
ゴン、ガン、ボンという音が第6階層に響く。たまにジジイが避けようとするが
「むっ! 貴様、まさか!?」
「そのまさかだ! 行ってこい!」
鋼鉄化したジジイをハンマーで吹っ飛ばす。吹き飛ばされた先には泉があった。水に沈めてしまえば魔法を解くしかないだろう。水柱が立って、ジジイが泉に沈む。浮き上がってきた時が勝負だ。だが、ジジイが浮き上がるのに少し時間がかかっているようだった。もしや、水中で何かできたのか!?
「甘いわい!」
浮き上がってきたジジイは水中でクラーケンを
「やれぃ! クラーケンよ!」
悪者の親玉のようなセリフをジジイが吐く。だが、俺はクラーケンの触手をなんとかかわすと唯一軟体動物のイカの硬い部分である嘴に下からハンマーを叩きこんだ。衝撃が脳に伝わり、一撃で沈むクラーケン。
「ヨハンさん? なんであの人たちは本気で殺し合いしちゃってるわけ!?」
「うーん、何と言うか……ティナも食べたでしょ?」
「まさか……」
「そう、ヒビキがあとで食べようと思ってたプリンをライオスが食べちゃったの」
「…………あっ、今度はヒビキが石を投げ始めたわね。ハンマー届かないから」
「うーん、あの二人が喧嘩すると僕じゃ止められないからねえ。疲れるまで待つしかないんじゃないかなあ」
「その前にどちらかが死ぬんじゃなくて?」
「そうかもね。でもどうしようもないからねえ……」
「…………」
結局、騒動を聞いて駆け付けたミルトに怒られるまで俺たちは戦い続けたんだが、何故よりによってミルトに説教されるなんて事態になったんだ? こんな時にかぎってコスタは空気のようであったけども。
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