名のない猫と三十路女の非日常な日常

さて…、また日が変わり、これでもか、と言わんばかりに、

俺の脚に擦り寄る、

この緑色に光る猫ちゃんに名前を付ける時がやってきた。

覚えやすく呼びやすい名前がいいよな…?

ここは俺のネーミングセンスが問われるぞ…、

と、参考までにライナに、あのグリフォンの名前の由来を聞いておくか、と、タイミング良くグリフォンにご飯をあげているライナに尋ねる。

「なぁ…?その、グリフォンの名前ってライナが付けたのか?」

「フォンちゃんですか?」

「そうそう、フォンちゃん」そういえば、そんな名前だったな…、

「私ですよ?」 

「そうか…、何で、その名前に?」 

「何で…?って、グリフォンだから、フォンちゃんですっ!覚えやすいでしょっ?」 

思った以上に安直なネーミングっ!?

「そっか…グリフォンたから、フォンちゃん…」

首を傾げるライナを背にガックリ肩を落とす俺、ライナを参考にするのはヤメよう…。

しかし、覚えやすい名前か…。

そう思いながら、脚に擦り寄るにゃんこ。

このにゃんこには…緑色に光っている特徴があるが…。

緑…みどり…翡翠(ひすい)…グリーン…エメラルド…ふむ…。

頭にふとした名前が浮かぶ、「エメラ…」

うん…、エメラルドのような光り輝く猫ちゃんっ!

「今日から、お前はエメラだ!」

気付いたらそのまま抱っこしながら、名づけていた。

…と、それに気が付いて俺の近くに歩み寄り、ライナが、

「今まで名前付けなかったんです…?」

「まぁな…恥ずかしいことにね…?でもやっとこさ名前を呼べるよ…。」 「良かったね〜?素敵な名前貰えて〜♪」 

と微笑みながら、俺の腕に抱かれるエメラの喉を優しく撫でるライナ、因みに魔力とやらを視認できるライナはエメラの事も見えるのだ。

そうして。

ふと俺のそばに現れた猫の名前付けが終わった。

そしてまた1日が終わった、

次の朝、台所から、食器の物音がする。

ライナが朝食の準備をしている、その物音にふと、目覚める俺とエメラ…。

窓の外、複数の鳥達と空高く飛行するフォンちゃんことグリフォン、前まで有り得なかった非日常な朝だ。

スマホを手に取り時間を確認する。

午前6時だ、早起きなライナのおかげで俺も自然と早く起きるようになったな…。

そして、まだ眠たそうなエメラを撫で撫で…そうしていると

「ゴロゴロ…」

と喉を鳴らす。

かわゆい…。エメラルド色に発光するフサフサの毛並み…。

願わくば、このまま永久に撫でていたい…。

モフモフしていたい…。 

「駄目ですよ!!」と、ライナに咄嗟に釘を刺されたが…。

モフモフの前には敵わないんだよ…?ライナさん…?  

「分かりますけど!モフモフは、朝食を済ませてからにしてくれませんか?ほら、さっさと手を洗って、顔を洗って下さい!」

渋々、エメラから離れ洗面台に向かうのだった…。

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