女騎士の頼み事と新しい同居人は突然に

「あ、貴女は?」

そう言って女騎士は俺の方に向き直る、

「通りすがりの一般人ですよ、このスーパーで買い物をしようとね?」 「スーパー…??」 

そう言って首を傾げる女騎士。

スーパーを知らない…?

この人、コスプレイヤーさんじゃないな…。

金髪で蒼い眼…どこか幼さの残る顔つき、身なりといいどっかの国の人かな?

でもそれだと日本語が通じるのもおかしいし、日本語も流暢だ…、

だけど、この人は放っといたらダメな人だ。

でもどうする…?近くに交番は無いし…、ここは俺が何とかしないと、

でも俺にできるのか…?と考えるより口が動く

「あの、俺で良ければ力になりますよ?」 

「い、いえいえっ!一般の人には迷惑を掛ける訳には!」

そう言ってあたふたする女騎士、

まぁ、ただの通りすがりの一般人には話す内容じゃあないってか…。

それはそれで傷付く…。

なら俺を知って貰う為に自己紹介だな

「俺は、細矢未知、このスーパーの近所に住んでる者です、こう見えて30を超えてます。お姉さんは?」

そう言って女騎士にも自己紹介して貰おうと尋ねる

「わ、私はライナですっ!ラインニューラル・クリスタルですっ!」

変わった名前だな、どこかの国の人とは思ってたけど。

まぁ、俺も人の事言えないか…。

よしっ!自己紹介も終わったし、これで話してくれるかな…?そう思い、尋ねる。

「クリスタルさんはこんな夜にスーパーの周りをウロウロしてどうしたんです…?時間的にウロウロしてたらパトロール中のお巡りさんに職質受けますよ…?」 そう言うと女騎士は首を傾げて

「しょくしつ…??おまわりさん…??」

ぎこちなく質問する女騎士…。ここまでとは…!

これじゃあ、まるで異世界から迷いこんだかのような口振りじゃん!?咳払いして言い方を変える、

「おっほん!言い方を変えますね??警備隊に捕まるって意味ですっ!」

すると女騎士は青ざめた顔をして、

「えっえっえっ!?!!?」

酷く困惑した様子で俺の肩を揺する、

「何でっ!?何でっ!?私怪しい者じゃあないですよっ!!」 

「傍から見たら怪しい者ですよっ!」 

「全身甲冑を着た一般人なんて存在しないっ!!」

そう言って女騎士に怒鳴る。そして女騎士は涙目で俺を睨む、

そして驚愕の一言を言う。

「貴女だって魔力を宿しているじゃないですか!!」 

「はっ…?魔力?」

そう言ってボー然として女騎士を見る。続けて俺は

「魔力ってあの魔力…?」すると女騎士は 

「他に何があるんですか…?」

「いやいや!?クリスタルさん…?寝言は寝て言って下さいよ…?魔力ってあの、魔力でしょ…?」

困惑する俺…、相手が困惑したら俺の番って…、あの時もそうだけど俺ってやられたのをそっくり返されるタイプか…?それはそれでやだなぁ…。

そうして困惑すると、女騎士ことクリスタルさんが続けて言う

「貴女、脚を怪我してますよね?」

俺は驚いた、脚は長ズボンで見えてないのに…。

この女騎士、脚を怪我した事を見抜いている…。

「どこでその事を…?」

俺が質問するとまたしても驚きの答えが返ってきた、

「貴女の身体から魔力の粒子が漂っているからです…。それも脚に集中してね?」 ということは早く退院できたのもそれのせい…?

「なるほどな…」俺はそう呟き、

続けて長ズボンの裾を捲り傷の跡を女騎士に見せる 

「クリスタルさんの言う通り怪我をしましたよ…通りで回復が早いと思ったよ…」

そう言って裾を元に戻す。

すると女騎士が質問する 

「あの…、差し支えなければその怪我の経緯を聞いても…?」

この人ならば詳しく言っても良いだろう。

それに、あの事件は遅かれ早かれ日本中に知れ渡るしな…。

「んじゃあ、場所を変えましょうか」

そう言って俺の自宅に案内する、

自転車は二人乗り出来ないので押して帰る事に…。

暗い夜道もあって女騎士の格好も目立たない。

そうして向かう途中で女騎士が聞いてくる

「しかしこの国には見た事も無い乗り物がいっぱいですねっ!」

そういえばこの女騎士は何処から来たのか…。

「そうですね〜…」

と簡単に返しながら自宅を目指す、すると途中で近くの田んぼにデカい四つ脚の生き物が闊歩している…。エサを探しているのか…?その時、

「あっ!おおーいっ!!!」

あろうことか女騎士がその生き物に向かって呼んだのだ…。

「し、知り合いなのか!?」そう質問すると女騎士は

「はいっ!私の相棒ですっ!」またしても驚いたよ…。

あんな大きな生き物と知り合いとは…。

見ると、頭は鳥、身体はライオンのような感じだそれに翼も生えている…。話によればグリフォンと言う生き物なのだそうだ。

そうして無事に俺の自宅に到着した。

家の玄関をあけるとあのにゃんこがそして女騎士を部屋へと案内し。

ソファーに座らせる。

因みに、あのグリフォンは上空に待機させるように女騎士に頼んだ。

そうしてあのにゃんこが行儀良く待っていたが、

ここで買い物の事を忘れたのを思い出した。

そうして、台所に向かい、インスタントコーヒーを淹れる。

そこで居間のソファーで座る女騎士に一言、

「コーヒーは甘めでいい?」

そう言いながらコーヒーを入れたカップに角砂糖を2個程入れ。

俺のはコーラをデカめのコップに入れ、

そこへ、ストローを挿し込み、

そしてテーブルにそれぞれコーヒーとコーラを並べ、

女騎士と対面する形で座り、俺から話しを切り出す。

「さて、どこから話したものか…。」 

「それ程、複雑な事情なのですか…?」 

「まぁね…。色んな事が起き過ぎてな…。」

そう切り出しながら続ける。

「昨日、仕事帰りに異形の生き物が俺の乗る電車に襲撃してきたんだ…そして、沢山の怪我人が出た…。助けを求めようと先頭車両に行ったらその生き物が運転手を喰ってた…あの光景は忘れたくても出来ない程に眼に焼き付いている…」

女騎士は俺の話を黙って聞いていた。

「そして運の悪い事にその生き物はこっちにも目を付けた。そして襲ってきたんだよ逃げても良かった、だが俺が逃げたら他の人達まで犠牲になる…。なら新しい犠牲は俺1人でいい、そう思って気付いたら足元にある鋭いガラス片を一枚取って。他の皆がいる車両に駆け出して逃げるように叫んだ。俺は1人ガラス片を投げつけ、戦った、死ぬかもしれない戦いだったよ…。戦いってこんなにも怖いんだなって思った、そしてガラス片を取ろうと屈もうとしたら生き物に刺さったガラス片が俺の脚に投げ返された…。っとそんな感じで脚に刺さったんだよ、脚のキズはその時のなんだ」

そう言い終えて、女騎士が涙を流しながら

「見知らぬ人々の為に傷付きながらも一人戦うなんてっ!!このライナ、不肖ながら感動しましだっ!!!!」

顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ…。

「はは…、結果的には、皆逃げられたしな?それに応援も呼んだみたいだしな?ほらティシュあげるから顔拭きな…?」

そう言って女騎士に顔を拭かせる。さて…、

「次はアンタの番だ。あの辺でウロウロしてた訳を話してよ?」

「それにあのグリフォン?といいアンタは何処から来たの?」 

「それが…、どうやってここに来たのか私も訳分からなくて…直前まで大きな穴のようなものに引きずり込まれて…」 

そう言い終えて続けて俺が「今に至ると…?」 

そう言い終えようとしたら女騎士が立ち上がり深々と頭を下げ…、

「英雄様っ!!突然のお願いですが私をここに置いていただきたくっ!」

昨日の事件が無ければ信じていないだろう…だが、今は違う。

「分かった。今は帰る術も無いだろうし…、暫くはここに居ていいよ、ただし、多少の雑用はしてもらうぞ?」

すると女騎士は眼を輝かせながら涙を流しながら 「英雄様ぁ!!ありがとうございます!!ありがとうございます!!」

そう言って何度も御礼を言い何度も頭を下げる…。

何と言うか涙もろい女騎士だな…。

「というか英雄殿はやめて…、くすぐたいから…」

そう言って

「未知でいいよ」

そう言うと女騎士も続けて

「では私の方もライナと気軽にお呼び下さいっ!!」 

「分かった、ライナ、これから宜しくな?」

「こちらこそ!未知っ!」

こうして奇妙な同居人がまた増えた。

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