第3話

書きながら思う。


これを書く意味を。




自問自答しながら書いている。



おそらく読んでほしいのだと思う。




こう考えてしまう私を知ってもらいたい。






別れが、辛いと感じたことのない私を。





聞いてもらいたいだけかもしれない。





つい先日。

彼氏に振られた。

一年間、割とまっとうなお付き合いをさせていただいたと思う。


小説や、音楽、詩。

別れ話には涙が付きものであるという風潮。


私も少しは泣くと思っていた。

哀しくなると思っていた。



彼のことはちゃんと好きだったと思う。

しかし、感じる感情の中に、哀しさはなかった。





約1年前。

飼い犬が死んだ。

私が生まれる前から家にいた為、多くの時間を過ごした。


飼い犬の世話もきちんとこなしていたし、犬派であった私は飼い犬が大好きだった。

小学校のころは家に帰り宿題そっちのけで犬とじゃれあっていた記憶がある。


動物病院から母と妹が生を持たず、腐らないように保冷材までともに入った籠。

あっつい夏なのに冷たい飼い犬の毛に触れても

なにも感じなかった。


否、感じなかったわけではない。

もうコイツと遊ぶこともできないのか。

寿命以上に生きていた飼い犬に尊敬と感謝。


ただ、涙をぼろぼろ流す家族の前

私の目にはなにもあふれるものはなかった。


そっと自室へ籠った。

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