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第1524話 ユートさんの次はクレアが来ました
第1524話 ユートさんの次はクレアが来ました
「はぁ、全くユートさんは……」
変な趣味の世界に引きずり込もうとするユートさんをやり過ごし、話も終わって退室していった後、一人残った執務室で深く椅子に腰かけて溜め息を吐く。
なんだろう、エッケンハルトさん達と話し合いをしていた時より、ユートさんと話していた時の方が疲れた気がするんだけど……。
「まぁ後半はともかく、全てが無駄な話ってわけじゃなかったけど」
魔物を利用する人がいる可能性については、有益な話だったと思う。
誰が、なんのために、とかは全然わからないけど。
「すっかり冷めちゃったけど、美味しい。はぁ、落ち着く」
残っていたお茶をカップから飲み干し、もう一度息を吐く。
冷めても美味しいお茶は、もちろん暖かい方が美味しいし落ち着くんだけど、頭を整理するには丁度いい。
誰かに頼んで、お茶を入れなおしてもらったりもできるけど、そろそろ俺も動かないといけないからなぁ。
ちなみに、使用人さんとかを呼ぶのはよくあるベルを鳴らす……なんて事を想像していたんだけど、違った。
いやまぁ一応ベルもあるけど、誰かを呼ぶ時は落ち着いた内装の洋室には不釣り合いの、壁から出ている金属管を使う。
壁の中を通して一部の部屋と部屋を繋いで声を届ける、伝声管になっている。
意外と原始的というか、ある意味近代的かもしれないけど……日本に限らず地球では今でも使われているし。
ともかく、それを使って使用人さんを呼び出せるようになっているし、内部に声を増幅する仕組みがあるらしく、結構小さい声でも届いてくれる代物だ。
誰かを指定して呼ぶ際には便利だな……お茶のおかわりとか、大した事のない用の時はベルを使うけど。
あと、伝声管は俺とクレアの寝室、執務室に付いていて、それぞれ使用人待機室などに繋がっていた。
さすがに全ての部屋には繋がっていないし、寝室や執務室と同じ階にある使用人待機室には、例外はあれど基本的に誰かが待機している。
「……あー、そういえばレオ達はどうしているかな? そろそろ様子を見に行くくらいはしておかないと……」
伝声管の事はともかく、なんとなくお茶以上に俺の精神的に効果のあるレオを撫でて、和みたいと考えて思い出した。
散歩から帰って来たレオ達は、今頃ライラさん達にお風呂で洗われている頃だろうか。
話し合いが長引く可能性を考えて、もしかしたら行けないかもとは伝えてあるけど……顔くらいは見せておきたい。
全部任せっきりというのも、ライラさん達が大変だろうからな。
何度か、俺抜きでお風呂にレオを入れてもらったりしていたし、慣れてはいるだろうけど。
今回はフェンリル達や子供達もいるから大変だろうし……。
「レオ達の様子を見て、そのあとはティルラちゃんと鍛錬かな」
引っ越しもあって、おろそかになりがちな鍛錬もそろそろ再開しないとなまってしまう。
一度やり始めた事だし、エッケンハルトさんもいるんだから鍛錬はしておきたい。
あ、でもガラグリオさん達も手伝わないと……鍛錬の前にそっちだな。
「色々やる事が多いなぁ、仕方ないけど。んー……よし! って、ん?」
書類仕事は昨日までで大体終わっているけど、他にもやる事がいっぱいだ。
億劫になりそうな気分を変えるように、声を上げて重くなりつつある腰を椅子から上げた……それとほぼ同時に、執務室の扉がノックされた。
誰だろう? レオ達の方で何かあったかな?
「タクミさん、私です。入ってもいいですか?」
扉の向こうから聞こえた声は、クレアだった。
もうハンネスさん達の見送りは終わったんだろうけど、この部屋に戻って来るのは何かあるのかな?
ユートさんみたいに、人が原因の可能性がある……と忠告に来てくれたとかもしれないな。
「クレア? うん、どうぞ」
俺が声をかけると、ゆっくりと扉が開いてクレアが入ってきた。
「どうしたんだい、クレア?」
少し、こちらを窺うような、そんな目をしている様子のクレア。
忠告かもしれないと予想はしつつも、一応こちらから聞いてみる。
「その……大丈夫ですか、タクミさん?」
「え?」
クレアから返ってきた言葉は、予想とは違った。
大丈夫って何の事だろう、と思いながら首を傾げる。
「私が過剰に心配しているのかもしれませんけど、先程の話し合いで、タクミさんはお父様やお爺様、他にも多くの人から注目されていましたから……以前程、おかしな様子は見られませんでしたけど」
「以前……あぁ、成る程」
クレアが俺を窺うような様子だったのは、以前話した俺のトラウマに関してみたいだ。
皆の前で発表をするとか、会議をして注目を集めるとか、それに対して恐怖感を感じるというトラウマがあった。
いや、ある……かな。
あの時、クレアと話したり抱き締められたりはしたけど、さすがに簡単に克服できると言える程、俺は精神的に強くないし、強かったらトラウマにもなっていないだろう。
「うん、まぁ大丈夫かな。少し慣れたのもあるけど、エッケンハルトさん達が俺の意見や話を、無碍にするような人じゃないっていうのは、わかっているつもりだから」
気にしてくれて、心配してくれた事を嬉しく思いつつ、ちょっとだけ気恥ずかしくなって頭をポリポリとかく。
屋敷に来てすぐにも、皆の前でこれからについて発表したし、それで少しは慣れたんだろう。
今回俺に注目していた人達は、気心の知れた人達も多かったし、ちょっとした失敗くらいなら気にしない人達だろうから、今日は大丈夫だ。
人数も以前より少なかったからな。
「当然です! お父様達がタクミさんの意見を頭ごなしに否定をするようなら、私がきつく叱ります!」
エッケンハルトさんを叱るクレアさん、という構図はユートさんを叱るルグレッタさんと同じく、容易に想像ができる。
ただあの場ではちょっとな。
「ははは、ありがとう。でも、さすがにそれは俺自身が情けないかな」
あの場を任されておいて、クレアにかばわれるのは男としてはさすがに情けない。
エッケンハルトさん達は面白がりそうだからいいとしても、近衛護衛さんとかハンネスさんとかもいたから。
まぁ男としての、あまり意味のない意地みたいなものだけど。
クレアとしては以前俺に、私がさせませんと言っていた事からだろうなぁ。
意気込みは嬉しいし、心強いと思った――。
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