第1441話 大広間に集まりました
「ワフゥ……ワフ、ワフワフ」
「まぁレオとフェリー達は、そもそもの種族が違うから。あまり、自分基準で考えたら駄目だぞ?」
「ワウゥ……」
あれくらい走った程度で情けない、とレオは言っているようだ。
とはいえ、シルバーフェンリルとフェンリル。
そこには絶対的な能力の差がある……らしいから、レオにとっては簡単な事でもフェリー達にとっては難しい事も当然あるからな。
苦笑してレオを撫でながら、お出掛けレオを見送るために屋敷の中へと入った。
中庭から屋敷を迂回して門まで行く事もできるけど、屋敷の中を通った方が早いからな。
わざわざ、レオの足を拭いたりスリッパを履き替える手間はあるけど。
ちなみに屋敷はコの字の形で造られているが、中庭には玄関ホールの階段裏からすぐ出られるようになっており、外に出るのに数分はかかった別邸よりも便利になった気がする。
レオやシェリーが、外にトイレをするために出るのにも、楽になったのが一番か。
前は、シェリーがそれで間に合わなくて廊下で……という事が何度かあったから――。
――お出掛けレオを、玄関ホールから見送って……さらに追いかけるように階段を降りてきたシェリー見送り、大広間へ移動。
シェリーが遅れたり理由は、エルミーネさんに毛をブラシで梳いてもらっていたらしい。
なんでも、出かける前にクレアにお願いしたのだとか。
村で子供達と遊べば、そんな事関係なくなるだろうにと思わなくもないが、シェリーに特に懐いているマルチーズと会うためらしい……シェリーも立派な女の子だなぁ。
というか、毛を梳かして身支度をするという感覚は、リルルには見られないのでクレアと一緒にいる影響な気がする。
近くでクレアの事を見ているからよくわかるけど、いつも身支度は欠かさないようだから。
油断している姿を見る事もあるけど。
シェリーもちゃんと成長しているだなぁ、と感慨深く思いながら大広間に入り、集まっている人達に挨拶をしつつ所定の位置に付く。
「さて、皆集まったな?」
大広間を見渡し、声を掛けるエッケンハルトさん。
俺とクレアは、集まった人達に向かい合う形で立ち、皆を窺うエッケンハルトさんを見る。
らエルミーネさんと初老の執事さんが一人、さらにライラさんとアルフレットさんは、俺達から少し下がった場所で脇を固めるようにして立っている。
他には、テオ君と近衛護衛さん達から四人、オーリエちゃんはユートさんと一緒にいてここにはいない。
ユートさんは、近衛護衛さんやルグレッタを引き連れて村の様子を見て回るつもりのようだ……直接、この屋敷や薬草畑に関わる人じゃないからというのもある。
ついでなので、一応レオ達が楽しく遊んでいるかの様子も見てもらうようお願いしておいた。
まぁ、大公爵だったり王家だったりするユートさんに、気軽に頼み事をなんてエルケリッヒさんに驚かれたけど。
なんとなく、気のいい友人や兄に近い感覚になっているからだろうか。
当の本人は、笑って請け負ってくれたから特に気にしていないようだし……も失礼な事をしているようだったら、エッケンハルトさんが注意してくれるだろう。
いや、頼んでいる時、隣にいたエッケンハルトさんが何故か羨ましそうにしていたんだけど。
エッケンハルトさんも何かお願い事をされたかったとかだろうか? 注意はあまり期待できそうにないかもしれない。
あと、ティルラちゃんやエルケリッヒさんもこの場にいる。
「ではタクミ殿、クレア、後は任せた」
「はい」
「えぇ、お父様」
こちらに視線と言葉を投げかけるエッケンハルトさんに、クレアと共に頷く。
少しだけ間をおいて、俺も集まっている人達を見渡す。
フェリーの散歩に付き添っている使用人さんや護衛さんを除き、俺の使用人さん全員と、クレアの使用人さん、それからヘレーナさんを始めとする料理人さん、ミリナちゃんやガラグリオさん達、薬草畑に関する従業員さんも全員いるようだ。
もちろん、児童館に住む孤児院からカールラさん達や、ニックもいる。
さらに、今日到着したばかりの従業員さん達もだな……デリアさんやペータさんは、まだ到着していないけど。
三日後に出発すると大広間に入る前に報せを受け取ったから、今頃ブレイユ村を発った頃だろうか。
ブレイユ村からランジ村までは、ラクトスランジ村間とあまり変わらず馬で二、三日くらいだから、大体それくらいで到着すると思う。
荷物もあると考えて、荷馬車を使っていたらもう一日追加くらいかな。
他にまだ来ていない従業員さん達も、それくらいには集まる予定だ。
「えっと、移住の挨拶とかは昨日済ませたので、省きます。あと、まだ到着していない従業員さんもいますので、本格的に仕事を開始するのはそれ以降になります」
従業員さん達に視線をやりつつ、少し声を大きくするよう意識して話しかける。
人も多いし、大広間が大きいので皆に声が行き渡るようにだ。
大分慣れたけど、やっぱり皆に注目されながら話すのは緊張するけど、表に出さないようにはできるようになっている……かもしれない。
「あ、一応個別に話しはするので、今日到着した人達は移動で疲れているかもしれませんが、後で残っていて下さい」
新たに合流した従業員さん達が頷くのを確認する。
何故か、挨拶を済ませたと言った時残念そうにしていたからな……個別に話す、というか昨日と同様に挨拶をするだけなんだが。
宴会が行われたのが昨日だと聞いて残念がるならわかるが、俺と挨拶をするのを残念がるのはどうなのか。
まぁ、嫌がられるよりはいいか。
「それでは次に……」
知らない人もいるので、まずクレアと一緒にそれぞれのメイド長と執事長の紹介。
俺やクレアに直接でもいいんだけど、一応そちらが俺達に対しての窓口代わりにもなる。
実際には、屋敷の使用人さん達全員がそうでもあるんだけど、執事長、メイド長は俺やクレアと行動を共にする事が多いから、細々とした事を取りまとめる役目ってところだ。
俺の使用人さん達の中で、メイド長はライラさん、執事長はアルフレットさんだ。
クレアの方は、メイド長はエルミーネさんで別邸の頃から変わらず、執事長はセバスチャンさんからヴァレットさんという、先程からクレアの後ろで控えていた初老の男性になるだな――。
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