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第1407話 レオがイタズラをする気配のようなものを察知しました
第1407話 レオがイタズラをする気配のようなものを察知しました
「レオ……何をしているんだ?」
「ワ、ワウ~?」
問いかける俺に、とぼけるような鳴き声を上げながら視線を逸らすレオ。
こういう事をする時のレオは、何かやましい事をしようとしている……。
よくイタズラが見つかりそうになった時なんかに、今のように俺と目線を合わせないようにしていた。
コッソリと何かをしようとしていたという事だ。
「そういえば、俺の服を噛むおもちゃにして遊んだ挙句、破いた時も隅に隠してそんな感じだったな? あと、俺がいない間に箱に入っていたティッシュを散乱させた時も……」
「ワ、ワフワフ~?」
横たわっていたベッドから立ち上がりながら、昔レオがやったイタズラを思い出しながら口にすると、さらにとぼけたような鳴き声を出すレオ。
な、なんの事かな~? みたいな事を言っているようだ。
まだマルチーズだった頃のレオ……出会って一年くらい、イタズラ盛りの思い出だ。
ティッシュは隠せなかったので、部屋中に散乱したティッシュはすぐに見つけて、思わず悲鳴に似た声を出してしまったりもしたが。
服に関しては、妙に部屋の隅にいたがるレオの様子がおかしいと思って探って見ると、ビリビリに破れた俺の服が出てきた事がある。
遊んで興奮している時はともかく、落ち着いて冷静になったレオなりにまずい事を……怒られる事をしてしまったと思ったんだろう。
今のレオの反応は、その時の様子にそっくりだ。
まぁ体がものすごく大きくなって、精悍な狼の顔つきにはなっているけど……醸し出している雰囲気や表情は、あの頃とあんまり変わらない。
「……見る限り、まだ何もしていないように見えるな」
視線を巡らせて、レオのいる場所を観察してみても何も見つからない。
「……何をしたんだ? いや、今から何かをしようとしていたのか?」
「ワ、ワフワフ! ワッフ!」
「何もしていないし、するつもりはない、と。でもなぁ、今のレオの様子からはとてもそうには思えないんだよなぁ?」
まだ何もしていないのなら、今から何かするつもりだったのかもしれないと問いかけると、レオは首を左右に振って鳴いた。
ただレオの様子からは、本当に何もしようとはしていないといった雰囲気は感じられない。
誤魔化しているように、俺からは見えた。
自分が訝し気にしているのを自覚しつつ、首を傾げて窺うようにしながら、ベッドから降りてゆっくりとレオに近付く。
「ワッフ~、ワフワウ~」
相変わらずとぼけるように鳴くレオ。
近付いて周囲を見てみても、何かおかしな様子はない。
壁や家具を噛んで傷付けているという事はないし、床や絨毯にも何もない。
おもちゃのゴムボールは……穴が開いたのが机の足下に転がっている、あれまた新しいのを作らないと
いけないけど、まぁ今は関係ないからいいか。
「んー、本当にまだ何もしていないみたいだな……」
「ワッフ!」
何もしていない様子を見て呟く俺に、レオは当然とばかりに鳴いて頷いた。
「けど……」
「ワウ……?」
意識的に少しだけ声を低くして、短く声を出す。
レオは首を傾げた。
「いつもなら俺の近くや、ベッドのそばにいるのに今日に限って離れているのは、おかしいよな?」
「ワ、ワフ……」
新しい部屋が落ち着かなかった、と言うのは多少あるかもしれないが、それでもいつもなら俺の近くにいてくれるレオ。
クレアと出会い、初めて別邸に行った日に用意された部屋では、こんな事はなかった。
慣れなくて落ち着かないという意味だったら、あの時の方が強く意識していたはずなのにだ。
つまり、今のレオは何かをしようとして、俺から離れていたという事のはず。
「それに、さっきまで俺がいない間リーザと一緒にいたわけだし……ん?」
「ワフ!?」
俺がリーザ、と言った瞬間に何やら大きく反応したレオ。
リーザに関係する事か? いや、でも今はライラさん達と一緒に風呂に入っているわけで、関係するならリーザがいる時だろうし……。
「どういう事だ……? お漏らしした様子もないし、リーザもいない……」
「ワウ!? クゥーン……キューン……」
「え……レオ?」
首を捻って考えてもわからず、声に出ていた言葉にレオがさらにまた大きな反応をした。
今度のレオは、体をビクッとさせた後項垂れて上目遣いするようにこちらを見ながら、鼻から甘えた鳴き声を出した。
リーザにはさっきから反応しているけど、それとはまた違った反応……もしかして?
「……お漏らし、か?」
「キュ、キューン……」
問いかけた俺に、また甘えるような声を出したレオはついに、立っている俺の方へコテンと横に倒れてお腹を見せた。
これはつまり……。
「当たりか……でも、そんな様子は全然見えないけど」
イタズラの有無を調べた時に、お漏らしなどはしていないのを確認している。
汚れた所もないし、臭いも一切ない。
って事は……。
「もしかしてレオ、トイレに行きたいのか?」
「キューン……クゥーン……!」
どうやらこれも当たりだったようだ。
こちらの世界に来てからのレオは、シェリーもそうだけどトイレは外で済ませるようにしている。
別邸では裏庭の端、ここでは中庭の隅だと宴会の前後で済ませていたはずなんだが……。
「我慢できないから、コッソリとか考えたのか? 言ってくれたら連れて行くのに……というか、自分で行く事もできただろうに……」
大きくなってからのレオは、こうして会話が成立するみたいに以前より賢くなっているので、自分で部屋のドアを開ける事ができる。
握り玉式のドアノブだったら難しかったかもしれないが、こちらで主流なのはレバー式のドアノブだからだけど。
とにかく、そういう時は俺などに伝えて一緒に行くか、レオだけで行っていたのに……今日に限ってどうして、この部屋も同じくレバー式で開けられるはずだし。
「風呂から上がったリーザにも、見られるだろ?」
「ワ、ワフ……ワフー、ワウ、ワフワフン」
リーザにも、と言ったら観念した様子で、仰向けになっていた体を起こしお座りの体勢になったレオが、観念したように話し始めた。
前足を忙しなく動かしてジェスチャーっぽくしているのは、俺に叱られると思っているからかもしれない――。
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