第1401話 一部の人達の宴会はまだまだ続きそうでした



「ライラさん。そうですね……それで大丈夫か、レオ?」

「ワウ……ワフ!」

「リーザもママと一緒ー!」

「私も一緒するから、よろしくねリーザちゃん!」

「うん!」


 ちょっとだけ、俺と離れると言われてどうしようか悩んだレオだが、子供達と遊べるとあって頷いた。

 リーザも楽しそうだし、ロザリーちゃんも……いつの間にかレオの背中に乗っているな、結構ちゃっかりしている……リーザが乗せたのかもしれないけど。

 とにかく、ロザリーちゃんもいてくれるなら安心だ。

 ロザリーちゃんがいるという事は、おそらくライ君もいるだろう……理由はまぁ淡い初恋とかそんな雰囲気を、ライ君から感じるから。


 とはいえ子供達の方がどうなのか予定がわからないため、明日誰かに頼んで聞いてもらうとして……フェンリル達の一部も混ぜるといいかなと決め、気を取り直したレオを連れて屋敷へと向かった。

 途中、一度広場に戻って屋敷へ戻る数人と挨拶をして、泣きながらお酒を飲むエルケリッヒさんや、困り顔のエッケンハルトさんに苦笑だけして、クレアと合流した。

 エルケリッヒさんはレオと、シルバーフェンリルと会えた事をとにかく喜び、お酒も入って涙腺が緩んだとからしい……エッケンハルトさんのお話は、効果があったのか微妙にわからない。

 ユートさんは、村の男性数人と一緒にルグレッタさんから木の板のような物で折檻されていたけど、何をしたのか怖いので放っておく事にする。


 あと、俺が子供達を送っている間に、テオ君とオーリエちゃんは屋敷に行ったらしい。

 そのテオ君とオーリエちゃんだけど、俺達が来るまでユートさんやエッケンハルトさん、それからエルケリッヒさんと新しく造った宿屋に泊まっていたんだけど、これからは屋敷の貴賓室に泊まる事が、食事中に決まった。

 元々、あの大きな宿屋はテオ君達……というよりどちらかと言えば、エルケリッヒさん達のような貴族も泊まれるようにと一部の部屋は豪勢に作られているらしい。

 近衛護衛さん達だけでなく、公爵家の兵士も配置しているみたいでその人達も、フィリップさん達に混じって宴会に参加していたけど。


 とにかく、一般的な生活を見るにあたって宿屋ではなく、どこかに居候する方がいいとどこぞの元最高権力者……というかユートさんが主張していたらしいので、俺達の屋敷で預かる事になった。

 レオもいるし、敷地内にはフェリー達、外にもフェンリル達がいて防犯対策は過剰なくらいで、近衛護衛さん達は安心してお酒を飲んでいた、と言うのは余談か。

 まぁ、俺達が来た事とこれからの事もあって、村に住む人達やハンネスさんに預けるのは難しいだろうと、引き受けた。

 クレアも了承済みだ。


 ユートさんやエルケリッヒさん、エッケンハルトさんが屋敷の貴賓室か宿屋で寝泊まりするかは、まだ決まっていないんだけどね。

 エッケンハルトさんはともかく、ユートさん達は割と自由なのでどちらでも構わないし、今日は特に飲み明かしそうだから後日決める事に。

 ……エルケリッヒさんは、レオの近くにいられる屋敷の貴賓室を希望しそうだけど。

 なんにせよ、ランジ村に来ても思っていた以上に騒がしく、それから忙しく過ごす事になりそうだなんて考えながら、クレアやレオ達と話しつつ屋敷へと戻った――。



「はぁ……別邸の時もだったけど、やっぱり広いお風呂はいいなぁ」


 屋敷に戻り、クレアとも別れて一旦部屋に戻る。

 もちろん、別れ際のハグは忘れない……テオ君達の話を聞いた時、レオがユートさんに唸っていた理由、俺がイラっとしていたのを察してみたいだけど。

 それをクレアはわかっていたみたいで、リーザやライラさん達に見られているのも気にせず、いつもよりちょっと強めに俺へと抱き着いて、微笑みながら部屋へと戻って行った。

 なんというか、強い。


 部屋へ戻った後は、そういえば客間よりも広かったんだと思い出し、慣れずに落ち着かないためそそくさと出てお風呂へ入って今に至る。

 リーザとレオは、ライラさんといつの間にか戻って来ていたゲルダさんに任せている……フェヤリネッテはすやすやとレオの毛の内側で寝ていたから、そのままに。


「あぁ、そういえばフェヤリネッテの事も話さないとなぁ。俺というかゲルダさんだけど、クレアとの仲を観察すると言って、レオにくっ付いているからなぁ」


 湯船につかって息を吐きながら、呟いて反響する自分の声を聞く。

 フェヤリネッテ、ゲルダさんと一緒にいるよりも俺やレオといる方が長いから、話すなら俺からの方が良さそうだ。

 隠しているわけじゃないからな、話すと長くなるし、他に話す事ややる事があったから後回しになっていた。

 フェヤリネッテも、俺が言った事を守ってあまり人前に出ないようにしているからな、興味が勝ると飛び出して来るけど。


「精神的には、結構のんびりできているけど……立て込んでいるなぁ」


 大移動、と言えるくらいの人数を連れての引っ越しだから、やる事が多いのは仕方ない。

 それでも、色々とやってくれる使用人さん達や、一緒にいてくれるレオやリーザ、それに最近一番の癒しであるクレア。

 日本にいた時みたいに、追い詰められる感覚は全くないので精神的には楽だし、皆に感謝しないといけないな。


「はぁ、クレアの笑顔が頭から離れない……」


 口元まで湯船に沈み、ブクブクと溜め息を漏らす。

 これまで一緒にいる事が多くて、散々見てきたはずなのに告白をしてからというもの、ずっとクレアの笑顔が頭の中で踊っている。

 いや、踊っているという言い方は変か。

 いつでもどこでも思い浮かべる事ができるというか、思い浮かんでしまうというかだ。


 多分、我慢してできるだけ表に出さないようにしていた気持ちが、告白で一気に解放されて抑えが効かなくなっているからかもしれない。

 でもそのおかげで、活力になっているという自覚もあるわけで……頭から振り払うのはもってのほかだ。

 その活力に任せて動き回り、忙しくしてしまうと少し前みたいに体調を崩して、皆に心配をかけてしまいかねないので、気を付けなきゃいけないけど。


「レオやフェンリルを撫でるのも、向こうが喜んでくれる以外に癒されるけど……クレアの笑顔は別格なんだよなぁ」


 毛並みが違い、レオもフェンリルもそれぞれ撫でている俺が心地良くて、癒される。

 でもクレアの笑顔は、それ以上……というか、また違う癒しに感じるんだよなぁ――。



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