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第1118話 うどんを食べさせてもらいました
第1118話 うどんを食べさせてもらいました
「ではタクミさん、どうぞ……」
「あ、ありがとう。ん……」
「ワフワフ」
「ワクワク」
「んー?」
ジェーンさんの相談が終わった後、何を思ったのか、フォークに短くしてあるらしいうどん麺を絡めるクレア。
もしかしてこの相談をしていたのか? と思ってしまう。
とにかく、ライラさんに背中を支えられて体を起こし、リーザの尻尾が離れる心残りのようなものを感じながら、クレアが差し出すフォークからうどん麺を口に入れた。
周囲では、レオやティルラちゃんからの面白そうな視線と、よくわかっていない様子のリーザ……こういう部分はリーザよりティルラちゃんの方が年上の女の子っぽいのか。
ちなみに、ジェーンさんやアルフレットさんも何やら期待する視線を送って来ている……気にしないよう無視しておこう。
「ん……」
「いかがですか、タクミさん?」
周囲の視線を何とか無視して、クレアに食べさせてもらったうどんを咀嚼し、飲み込む。
おそらくクレアが作ったんだろう、味の感想を聞きたくて仕方がないらしく、ちょっと食い気味に聞かれる。
「うん、美味しいよ。作ってくれてありがとう」
「そ、そうですか!? 良かったです……」
俺の感想に、顔を綻ばせる……どころか、パァ! と音がしそうなくらい輝かせて喜んですぐ、ホッと息を吐くクレア。
表情がコロコロ変わって、見ている俺としては楽しいし眼福だ。
「もしかして、麺から作った?」
昨日俺が作った醤油ぶっかけと具材から何から一緒だったから、麺はヘレーナさんが作った物を使用したのかと思っていたんだけど、食べてみると結構違った。
悪く言うつもりはないけど、コシなくて唇でも切れるだろうというくらい柔らかい麺だったから……ちょっと茹で過ぎで延びているのもあるのかもしれないけど。
「わかりますか? ヘレーナに教えてもらって、頑張りました!」
楽しそうに報告するクレアは、鍛錬や勉強を頑張った時のティルラちゃんとそっくりな笑顔だ。
「俺のためにありがとう。頑張ったんだね」
「はい! ちょっと、腕が痛くなりましたけど……」
お礼を言うと、クレアは嬉しそうにしながらも苦笑してフォークを持った手を上げ下げする。
その際、舌を少しだけ出しているのが可愛い……っとと、さっきからクレアの表情にばかり気になってしまっているな、熱のせいにしておこう。
そうか、麺を捏ねるところから頑張ってくれたんだな。
コシを出すために、足で踏んで捏ねる事もあると聞くくらい大変な作業なのに……麺がヘレーナさん達が作ったのと違うなんて事が、気にならないくらい頑張ってくれたのが嬉しい。
「クレアお嬢様は、不慣れな中でも一生懸命頑張っていました。私も手伝いましたが……」
「そうなんですね。ライラさんもありがとうございます」
ライラさんの言葉に、尚の事嬉しさが沸き上がる……うん、クレアが一生懸命作っている姿が目に浮かぶようで、自然と顔が綻んでしまうな。
まぁ、想像している厨房では、ヘレーナさん達が困った顔をしていたりもするんだけど。
「ライラは、ネーギを刻んだりとかでしょ?」
「ヘレーナさんに聞いて、昨日タクミ様が担当した部分をやらせて頂きました」
「あー、成る程」
ちょっと頬を膨らませて、ライラさんを見るクレア。
うどんのメインは、自分が頑張ったと主張したいようだ。
ライラさんは、俺がやったように大根おろしや刻んだネーギを用意して、盛り付けを担当したってわけか。
だから、昨日作った物と見た目はほぼ変わらなかったんだろうな……というのは、ちょっとクレアに失礼か。
「クレアお嬢様、クレアお嬢様……」
ちょっと周囲をないがしろにしながら、クレアの反応を楽しんでいると、ジェーンさんが横からクレアに声をかける。
口の端に手を当てて、内緒話をしようとする雰囲気だ。
「あら、どうしたのジェーンさん?」
「ここでグッと男心を掴むには、あれです。『あーん』と言いながら、食べさせるのですよ」
「はっ! そ、そうね。さっきもそう言っていたわね!」
「……ははは」
……ジェーンさん、内緒話どころか全部聞こえています……。
そりゃ、うどんを食べさせるために近くにいるんだから、声を潜めても聞こえるよなぁ……クレアも反応が大きいし。
さっき、部屋の隅で相談していたのは、そういう事だったのか。
「タ、タクミさん。……あ、あーん……」
「えっと……。あ、あーん……」
恥ずかしそうにしながらも、フォークに醤油ぶっかけのうどん麺を絡めて俺に差し出すクレアは、ちゃんと言われた通り「あーん」と言った……言い切った。
どうしようかと考えたけど、周囲の皆の期待する視線と頑張っているクレアに断る事はできず、大きく口を開ける。
「ん……うん。お、美味しいよ」
「そ、そうですか……」
照れながらも、口の中に入ったうどんを食べて、感想を伝える。
クレアは二度目だったからか、それともジェーンさんの入れ知恵だったからなのか、恥ずかしそうに俯いた。
頬がさっきよりも赤い。
「そ、それじゃあもう一度……あーん」
「う、うん。あーん……」
それからしばらく、皆に見られながらの羞恥に晒されながら、クレアのあーん攻勢によって醤油うどんを食べきる。
アルフレットさんやジェーンさん、ライラさんの笑顔と視線が痛い……ティルラちゃんやレオも楽しそうに見ているし……。
リーザとシェリーは、状況がよくわかっていない様子ではあったけど、落ち着いた後しばらくこの時の事を思い出して一人で悶絶していたのは、ここだけの話だ。
……父親代理としての威厳が……元々ないとかは考えない。
――どうしてこうなったんだろう? と疑問に思いながらも、回らない頭で考える。
うどんを食べさせてもらった後、ライラさん達使用人さんを残して、クレアやレオ、リーザとティルラちゃんは夕食のために退室。
さすがに、ここで俺が寝転んでいる状況でクレア達が食べるわけにはいかないし、レオが食べる量を部屋に持ってくるわけにもな。
汗を拭いたり、服を着替えさせてもらったりと、完全に病人としてのお世話をされる俺……いや、病人だし、服を着替えさせられるのは恥ずかしかったのに断れなかったんだけど。
唯一の救いは、担当してくれたのが同じ男性のアルフレットさんだった事か。
その後、夕食を終えたリーザとレオを連れて、クレアが再び部屋に来る。
ティルラちゃんは夜の鍛錬後に就寝するためいなかったし、シェリーも今日はそっちで一緒らしい。
まぁそこまでは良かったんだけど……問題はリーザがまた、尻尾枕をすると言い出した事から始まった――。
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